農業を巡る動き

 畜産にも地産地消を――高崎ハムが群畜連の事業を引き継ぐ 05.12.28

 全中、コメ先物市場設置反対を明確化 05.12.25

 米穀事業改革、全農利用のメリットはあるのか? 05.12.14

 政府が米国産牛肉輸入再開を決定――原産国表示のない外食で選択できるのか? 05.12.12

 WTO閣僚会議 農産物関税率引き下げ問題、結論先送りに 05.12.01

 コメ先物市場設置―小売り業界と農協系統は反対を表明 05.12.01

 「消費者はお客様」という視点が重要――農水省の農政改革推進本部 05.11.30

 米国産牛肉解禁問題――食品安全委が正式答申へ 05.11.29

 外食の売上げは上昇、しかしファーストフードは客単価が減少 05.11.29

 農業版産業再生機構が発足 北海道庁と道信連が提携 05.11.18

 食料輸入4カ国代表 重要品目への配慮をWTO農業議長に要請 05.11.03

 米国の「公約」=輸出プログラムが遵守されれば危険度は僅少 プリオン調査会が結論 05.10.31

 新農相に中川氏、2度目の就任 05.10.31

 コメの作況101 過剰分は約9万トンの見通し 05.10.28

 政府・与党が経営安定対策大綱を正式決定 農政の担い手集中が確定 05.10.27

 米国産牛肉でのBSE感染は低リスク?――プリオン調査会で一定の結論 05.10.04

 農業法人の出荷先は農協から直接販売にシフト 05.09.22

 農産物直売所が急増 2千〜5千万円の売り上げも25%に 05.09.22

 全農秋田の取引停止処分解除 秋田パールは県内に特化 05.09.14


畜産にも地産地消を――高崎ハムが群畜連の事業を引き継ぐ 05.12.28

 全農群馬県本部100%出資の子会社である高崎ハムが06年1月付で、群馬畜産加工販売農業協同組合連合会(群畜連)の事業を引き継ぐことが12月28日に発表された。高崎ハムは今後、地産地消に対応した地域ブランドを強化し事業の立て直しを図るとしている。
 これまで群畜連は特色の少ない生肉を納品していたが、消費者ニーズを踏まえることが無かったとして、今後高崎ハムとしてスーパーのバイヤーなどの意見を聞き地域の特色を生かした製品や銘柄を作り販売して行く戦略を取るとしている。

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全中、コメ先物市場設置反対を明確化 05.12.25

 12月25日に全中は、東京穀物商品取引所や関西商品取引所がコメ先物の上場を申請したことに反対する方針をまとめた。この方針によると、農水省がコメ先物の可否を検討する時期である06年3月目途に、同省の食糧部会などに反対意見を提出し、全国の農協組織を挙げての反対運動を行うとしている。
 全中は「コメ先物が始まることで主食のコメ価格が乱高下したり投機に巻き込まれたりする可能性がある」とし、山田専務は「(農水省が)上場を認可した場合は国の生産調整政策などに協力しないことも考える」、「コメ先物が関税自由化の突破口とされないよう反対運動を展開する」と述べている。

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米穀事業改革、全農利用のメリットはあるのか? 05.12.14

 全中は12月14日に開いた第4回販売事業等検討委員会で、米販売事業に関して全農の販売機能強化や共同計算の見直しによって全農利用のメリットを確立し、販売ネットワークや代金回収、物流等の機能を中心とした系統結集を図るとした。
 共計の見直しでは産地・銘柄毎の共同計算を基本に、1)販売対策費の廃止など費用項目の限定と集約化、2)費用項目の単価設定と削減目標の設定、3)集荷段階で生産者への予定価格の明示、4)計算結果の監査導入、5)計算結果を生産者へ通知・開示を行うとし、現行3,000円/60s前後の共計費を08年産には2,000円以内の水準とすることを決定した。
 全農は委託販売形態ごとに手数料を設定し、実需者と数量・価格等を契約したコメについては農協から直接買取る方式を導入する。委託販売手数料は、系統全体で定額制とし、統合全農の委託販売手数料は全国・県本部で一体化することとした。
 また、05年産から100%民間流通へ移行した麦については、政府の品目横断的経営安定対策の助成金処理と切り離し、手数料は定額で品代から徴収することとした。
 一方、園芸販売に関しては「卸売市場への無条件委託販売」に対置するものとして直販の強化・拡大を図りニーズに合わせた生産への誘導を促進するとし、一定の生産規模を確保すると共に、営業(セールス)や債権管理などの機能を全農(全国・県)や経済連で果たすことを目指すとした。更に加工・業務用販売で統合全農が「直販事業拡充戦略」を06年度上期までに策定し、県域や農協では販売チャンネル毎に生産組織を再編成し異なる手数料率を設定することや、市場販売と直販の部署を分けて機能別手数料を設定すること等が検討された。
 買い取り販売に関しては事前に数量・価格の設定が可能なものに関して統合全農が農協或いは生産者から直接買取る方式の導入も方向付けられた。しかし、全農全国本部が販売機能を殆ど持っていないため、全国本部の機能は直販事業拡充戦略の確立や卸売市場の代金回収・債権管理の一元化消費拡大の取り組みなどコストセンターとしてものしかないことも明らかになった。

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政府が米国産牛肉輸入再開を決定――原産国表示のない外食で選択できるのか? 05.12.12

 12月12日、政府は同8日の食品安全委員会の答申を受けて米国・カナダ産牛肉の輸入再開を決定した。輸入条件は全頭から特定危険部位を除去することと、20か月齢以下の牛であることで、この条件を満たしていることの両国政府の衛生証明書が添付されることになっている。また、輸入再開にあたって両国の輸出プログラムを確認するため、同13日から担当者を派遣して認証された食肉処理場を査察することも発表された。
 リスク管理機関である厚労・農水省は食品安全委員会の答申は科学的な評価だとし「輸入は再開できる」と判断したと説明し、原産地表示が義務づけられていない加工品や外食産業については自主的な表示取り組みを促進することも併せて公表した。

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WTO閣僚会議 農産物関税率引き下げ問題、結論先送りに 05.12.01

 WTOは12月2日の一般理事会でラミー事務局長が示した閣僚宣言の修正案を承認し、同13日から開催される香港閣僚会議へ付託した。修正案は農業交渉分野での関税引き下げ率など具体的な数値は盛り込まれずに分野毎に期限を定めて交渉を加速させることを要請するに止まった。
 農産物の関税引き下げ幅を巡っては上限関税の設定に反対するG10(日本・ブルガリア・台湾・アイスランド・イスラエル・韓国・リヒテンシュタイン・モーリシャス・ノルウェー・スイス)の他、日本のコメなど先進国に於ける「重要品目」数が全農産物の関税品目に占める比率に関しても1%から15%まで大きな開きがあるため、一般理事会での取りまとめは先送りされた。

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コメ先物市場設置―小売り業界と農協系統は反対を表明 05.12.01

 12月1日、04年の食糧法改正に伴い東京穀物商品取引所がコメの先物上場を計画している問題で、農水省・食糧部会が関係者に行った意見聴取の結果が発表された。
 同部会では05年6月からコメの卸・小売り団体や農業団体、消費者団体等8団体にヒアリングを行ったが、上場賛成意見は穀物商品取引所や全国米穀販売事業協同組合など4団体で、反対は農協系統2団体とコメ小売の日本米穀小売商業組合連合会。全国消費者団体連絡会は賛否を保留した。
 賛成の穀物商品取引所など卸団体は、価格変動をヘッジすることで生産者側にとってもメリットがあると主張したのに対し、農協系統と小売り団体は稲作が投機資金にさらされるとして反対している。食糧部会は今後協議に入るが結論は容易に出せないという見通しをコメントしている。

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「消費者はお客様」という視点が重要――農水省の農政改革推進本部 05.11.30

 農水省は11月30日に農政改革推進本部を設置し、07年度に導入する新たな経営所得安定対策の周知・徹底や担い手農家の育成運動などについて協議することとなった。同本部は中川農相を本部長に全中等の農業団体の他に、日本経団連や全国消費者団体連絡会などの代表者らで構成される。
 同農相は、「これまでは生産者と消費者の連携と言っていた。しかし、今後は(消費者は)生産者にとってのお客様、カスタマーという視点が大事だ」と述べ、消費者を起点とする農業生産をより強化することを明確にした。
 同本部には全中の宮田会長も参加し、「担い手作りと農地利用集積にJAグループが総力を上げて取り組んでいる」と強調したが、奥田会長の代理で出席した経団連の立花専務は、「旧来の構造が雪崩を打って変わっている。本当にやる気のある農家にはチャンス」と担い手に絞った政策展開を要請した。また、消費者代表となった消団連の神田事務局長は「安全性に加えて買いやすい価格追求も必要だ」と述べ、消費者側にメリットがある改革を求めた。

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米国産牛肉解禁問題――食品安全委が正式答申へ 05.11.29

 食品安全委員会は11月29日にプリオン専門調査会がまとめた答申案に関する意見公募を締め切った。同委員会によるとパブリックコメントは数千件で、12月8日以降の会合でこれらの意見を検討し、農水・厚労の両省に正式な答申を出す。
 答申後、両省は輸入条件を決定し輸入再開手続きに入ることになるが、農水省はアメリカが日本向けに認定した40程度の食肉処理場に家畜防疫員による査察をBSE管理体制について評価することを11月15日に公表した。

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外食の売上げは上昇、しかしファーストフードは客単価が減少 05.11.29

 日本フードサービス協会が11月29日に発表した「平成17年10月度外食産業市場動向調査」によると、新規店を含めた全業態・全店の売上げは前年同月比103.5%と前年より3.5ポイント上昇したことがわかった。これは、客単価が同97.5%と前年よりも下がっているものの客数が106.2%と大きく増えたことによる。
 内訳を見ると、居酒屋(対前年度111.5%)・レストラン(同107.2%)・喫茶(同105.1%)の業態で客数が伸長し客単価も微増気味なことに対して、ファストフードで客単価が95%と大きく押し下げていることがわかった。

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農業版産業再生機構が発足 北海道庁と道信連が提携 05.11.18

 北海道庁と道信連が不振の大規模農家を再生するため、農業版の産業再生機構である「農業再生委員会」を発足したことが11月18日の報道で明らかになった。同委員会は農家再生に向けてこれまでの経営指導だけでなく債権放棄まで踏み込んだ支援を行う。対象は酪農や稲作などの大規模農家で、市町村の推薦を受けて再生委が支援の有無を判断する。再生手続きに際しては農家に融資している農協に債権放棄などを要請するほか、政府が設立する予定の「農業再生ファンド」に出資を求める方針。また、債権放棄等の支援を講じても経営継続が困難な場合は、農地や農機等を引き継ぐ農家を紹介し耕作放棄を防ぐとしている。

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食料輸入4カ国代表 重要品目への配慮をWTO農業議長に要請 05.11.03

 11月3日に、日本・韓国・スイス・ノルウェーの食料輸入4カ国の農業団体代表がWTOのファルコナー農業交渉議長と会談した。各国の農業団体は、ドーハ・ラウンドの農業分野での上限関税の設定反対や、日本のコメなど重要品目に関して十分な数の確保などを訴えた。

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米国の「公約」=輸出プログラムが遵守されれば危険度は僅少 プリオン調査会が結論 05.10.31

 食品安全委員会プリオン専門調査会は10月31日の会合で、「米国の輸出プログラムが遵守された場合は、国産の牛肉とのリスクの差は極めて少ない」という結論の取りまとめを行った。
 米国の輸出プログラムは、1)全ての月齢で特定危険部位を除去、2)枝肉の格付けや個体・集団月齢証明で20ヶ月齢以下と証明するものとなっている。リスクの差は極めて少ないと答申した同委員会だが、同委員会は付帯意見として、輸出プログラムが守られない場合は「この評価結果は成立しない」ことや肉骨粉の飼料への交差汚染を防ぐリスク低減措置が適切に実施されているか、リスク管理機関による査察の仕組みが必要であることなども提言している。
 農水・厚労の両省が食品安全委員会に諮問したのは「米国とカナダが日本向けに実施する輸出プログラムによって管理された牛肉が日本産の牛肉とくらべてリスクが同等かどうか」という内容で、同委員会の吉川座長は「答申は安全性の評価を行うものであって、輸入再開の許諾権を持つものではない」と述べているが、11月15日のブッシュ大統領の来日に合わせた政治的決着という見方も強まっている。
 この答申に先立ち10月13日に民主党は、BSE特別措置法の一部改正法案と輸入牛肉トレーサビリティ法案を提出した。特別措置法の一部改正の内容は、BSE発生国から輸入される牛肉に関して、国産牛と同等に20ヶ月齢以下であることと危険部位の完全除去を行った証明を求めるもので、輸入牛肉トレサビ法に関しても、同様にBSE発生国からの輸入牛肉の台帳の作成や個体識別番号の表示を義務付けたものとなっている。

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新農相に中川氏、2度目の就任 05.10.31

 10月31日、第3次小泉改造内閣の農相に中川昭一前経産相が就任した。就任会見で同農相はWTO農業交渉に関して「守るところは守り攻めるところは攻める」と語り、上限関税問題について「これまでは経産相として見ていた。もう一度よく勉強していきたい」と述べた。農協改革については「農協は民間組織。自身で懸命に取り組んできたと思う。改革が必要かどうか、民間で出来るのであれば国がああしろこうしろという必要はないが、改革が不十分であれば考えていかなくてはならない」と述べた。

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コメの作況101 過剰分は約9万トンの見通し 05.10.28

 農水省が10月28日に発表した05年のコメの作況指数は、同15日時点で101とやや良だったが、コメの値崩れを防ぐための過剰米対策(集荷円滑化対策)が初めて発動されることとなった。これは作況が101以上の24都道府県で農協が過剰分を分けて保管し、市場に出ないようにするもので、同省によると豊作による過剰分は約9万トンになるという。

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政府・与党が経営安定対策大綱を正式決定 農政の担い手集中が確定 05.10.27

 10月27日、新たな経営所得安定対策大綱を政府・与党が決定した。これは、経営規模などの要件を満たした「担い手」に施策を集中するもので、「品目横断的経営安定対策」では、麦・大豆などの対象品目の内外コスト是正のために面積当たりで直接支払いするものと市場価格変動の経営への影響を緩和する対策が実施される。
 今回決定した大綱では、「担い手」とする経営規模を、都府県4ha・北海道10ha・集落営農20ha(稲作での担い手経営安定対策の要件と同等)としつつ、中山間地地域や受託組織の現状、野菜などの複合経営に特例措置を設けた。また、都道府県知事の判断で担い手とすべき生産者を支援対象として要請できる制度も導入する。
 集落営農では、経営規模だけはなく販売収入管理などの体制づくりと地域農地の集積目標、法人化計画の作成などの条件を設けた。受託組織も担い手に位置づけられたが生産した農産物の販売名義を持つことや集積面積目標なども示した。
 一方、経営所得安定対策とセットで導入される農業用水の保全等の「農業資源・環境保全策」は担い手以外もその対象となるが、現在の300〜400億円の補助金と同額の補助を都道府県も支払うように農水省が要請している。

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米国産牛肉でのBSE感染は低リスク?――プリオン調査会で一定の結論 05.10.04

 10月4日、食品安全委員会のプリオン専門調査会は、米国・カナダ産牛肉について「輸入される牛肉にBSE感染牛が含まれる可能性は低い」という結論でほぼ合意し、10月中にも答申案を取りまとめる方向となった。
 輸入が検討されているのは特定危険部位を除去した20ヶ月齢以下の米国とカナダ産牛肉とその内臓。同委員会は、1)日本向け輸出プログラムが守られればBSEプリオンによる汚染の可能性は非常に低い、2)21ヶ月齢以上の牛を完全に排除できなくてもBSE感染牛が含まれる確率は極めて低いと述べているが、輸入牛肉のリスクが国産牛と同等か、無視できないものかについては言及していない。
 また同日、アメリカ食品医薬品局はBSE対策として牛以外の家畜の飼料用として使用が認められている肉骨粉に関する規制を強化し、牛の脳と脊髄が肉骨粉に混入することを禁じることを発表した。しかし、牛の血液の混入を引き続き認めるなどBSEの交差汚染の可能性を残すものとなった。

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農業法人の出荷先は農協から直接販売にシフト 05.09.22

 新潟県の地銀である第四銀行のシンクタンクは、農業法人の出荷先が農協から消費者への直接販売へ移行していると9月22日に公表した。これは同県内の136の農業法人を調査したもので、農協への出荷は3年前の44%から43%に下がり、更に3年後は39%に低下すると見込まれている。その一方で、直売所やインターネット等を通じた直販は12%から13%に増加しており同様に3年後には16%となると予想している。
 売上高では、3年前と較べ「増えた」と回答した法人が41%、「減った」という答えは27%だった。また「今後連携したい相手」は消費者が49%で大学・研究機関(38%)、飲食店や外食産業は31%だった。

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農産物直売所が急増 2千〜5千万円の売り上げも25%に 05.09.22

 全国の直売所が01年から03年の3年間で、年間517ヶ所のペースで増加していることが9月22日に東北農政局の調査によって明らかになった。また、同農政局は市町村・第三セクター・農協などが設置主体の東北地方381ヶ所の直売所を対象に調査を行い、その内37.6%(111ヶ所)がこの3年間に新設されたことと、年間の販売額では1千万円未満が25.8%、2千万〜5千万円が25.1%であることを発表した。

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全農秋田の取引停止処分解除 秋田パールは県内に特化 05.09.14

 全農秋田県本部のコメ横流しと架空取引で農水省は9月14日、再発防止策が確立されたとしてこのコメの取引停止措置を解除した。また同日、コメ価格センターも同県本部の入札参加停止処分の解除を決定した。
 また、パールライス秋田は、実需者がはっきりとしているものを除き県外への卸間売買からは撤退、県内消費者などへの販売と産地精米事業に特化している。

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