世界の動き

米国から欧州への輸入米におけるGM米汚染に関する最近のニュース 06.10.13

 欧州のコメ市場の30%を握っているエブロ・プレバ社(スペインの食品加工会社)は、米国産米の輸入を止めた。これは米国で未承認GM米(バイエルクロップサイエンス社のLLRICE601)が発見されたことによる対応である。そしてこの品種は世界中のどの国でも商用米として承認されていない。英国グリーンピースは「米国のこれら品種の試験栽培は2001年に終わっているが、このLLRICE601は試験を受けていない。無試験のLLRICE601混入により米国の非GMコメ農家は汚染されている」と述べている。また別のレポートでは次のように報告している――EUに入ってくるコメの5分の1以上は米国の未承認GM米が混ざっている。これは欧州委員会独自調査の結果である。この調査は米国が8月にLLRICE601が商用米に混入していたという発表を受け行われたもの。

 米国におけるGM米汚染は深刻な問題である。特に高い補助金付きの米国産のコメを輸入している地域(日本、朝鮮、フィリピン、メキシコ、ブラジル)にとって重要なのだが、輸出禁止やGM米であるLLRICE種の試験についての報告を私は見たことがない。日本では食品・飼料用は禁止となっているものの2000年にLLRICEの輸入を承認している。

 このことは世界人口の半分の主食に影響する深刻な問題である。そしてGM米の試験栽培の中止を求める必要性がますます高まっている。

ジェラルド・グリーンフィールド

筆者はグリンピースの活動家でベトナム人。数年前から世界的な農業情勢
を全国農団労に提供して頂いているわれわれの運動の良き理解者である。

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GM米の危機が現実に迫る 04.11

 10月15日、世界食糧デーの前日、グリーンピースは警告を発した。それは世界で最大の人口を抱える中国でGM米商業化の可能性が出て来たためである。
 中国政府のGM穀物の承認過程に関与する或る中国人科学者は、シェ・パン・チャン氏(グリーンピース中国支部長)に対して「GM米の耕作が来年には始まるだろう」と述べた。世界中でコメの生物多様性を祝う食糧デーを控えて、一握りのGMO科学者と中国政府高官らが農業や食糧の根幹である自国のコメを危険に晒している。来年には1億人以上の国民の食卓にGM米が届くという事態が迫っているのに、ほとんどの人たちはこのことを知らないと、強く危惧している。
 また別のグリンピースの報告書によると、中国でGM米が商業化されれば在来品種の多様性が失われると指摘している。中国はコメの原産国で今でも75,000種以上という多くの原種を保持しているだけに深刻である。かってGMトウモロコシによってメキシコの在来トウモロコシが汚染された経験から二の舞になるのではとの心配がある。更に、その後タイやインド等の他のアジア諸国にもGMコメ生産が波及するという懸念も表明される。
 再び、シェ氏は「GMコメは健康障害や取り返しのつかない環境破壊を引き起こすだろう。天然の有機物と交配し再生産することが可能である。予想することも制御することも出来ないような方法で新たな環境問題を引き起こして影響を次世代へと広げていく」と、警告している。また、次のように結論づけている。
 2004年は国連の国際コメ年だ。「コメは命」というスローガンは、コメが世界人口の多くを占める30億人にとって最も重要な穀物であることを認めているのだ。しかし、GM米は命の危険を伴う賭で、それが報われることはない。コメの将来は、「コメは命」だと考えている人たちと共にあるのであり、少数のGMO科学者や政府高官達のためにあるのではない。

ジェラルド・ グリーンフィールド
2004/11

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エージェント・ブルー:コメ消滅作戦 04.06.03

 米国は1961年から1971年の10年間、ベトナムにおいて、森林と作物を破壊する目的で推計2000万ガロンもの農薬を化学兵器として使用した。ベトミンへの食糧供給や農民による支援の共感を獲得できなかった米軍の対応は、「支配できなければ、破壊せよ」という単純なものだった。大量の農薬の使用を伴うこの作戦は軍事戦略であると同時に高い利益をあげるビジネスでもあった。支配できないものは殺すという考え方は農薬産業の論理にぴったり当てはまるものだった。
 この作戦のため、米国の化学企業から15種類の非選別型除草剤が購入され、55ガロン入り容器に詰められ、サイゴンに運搬された。容器には中身を表示する10センチほどの色づけされた紙片が貼ってあった。マングローブ、森林、草、竹、作物などを破壊するために使用された農薬の容器にはたいてい2,4-Dと2,4,5-Tの混合物が入っていることを示すオレンジ色の紙片が貼られていた。これがいわゆるエージェント・オレンジである。
 エージェント・オレンジほど量は多くないが、青色の紙片のついたものもかなりの量が使用された。これはヒ素を含む除草剤(カコジル酸)で、水分を必要とする植物を干上がらせて枯らしてしまうものだった(脱水化)。これがエージェント・ブルーである。水分を必要とする稲を枯らすことで、それを主食とする敵を餓死させようというのである。1962年11月にはじめて水田に投下されて以降9年間、およそ120万ガロンのエージェント・ブルーが散布された。これが米国政府の稲枯渇作戦である。米国の軍事飛行に関する新しい研究によってベトナムで使用された除草剤の量がこれまでの推測をはるかに超えるものであることが判明した。「エージェント・ブルーは、脱水化による作物の枯渇を目的にベトナム戦争全体を通して使用された薬剤で、これ以外にも、主要に2,4,5-Tが含まれる薬剤400万リットル以上が作物に対して散布された」。
 コメの消滅は米国のベトナム侵略開始直後からの軍事戦略の一つであった。当初、米兵は水田やコメの保管庫に、迫撃砲や手榴弾を用いて爆撃を試みた。しかし、コメは予想以上に耐性があり、容易に破壊できなかった。破壊されなかったコメは種として回収され、蒔かれた。1967年末に国際戦争犯罪法廷(バートランド・ラッセルにより創設)に提出された報告書にはこう書かれている。「米兵はコメを破壊することは極めて困難であることを発見した。テルミット手榴弾を使用して稲を焼くことはほとんど不可能だった。コメを飛散させることはできても、しぶとい人間たちによってコメは収穫され続けたのである。コメが熟す前に除草剤で枯渇させることで収量の60〜90%を破壊する方が簡単だった」。 稲枯渇作戦はゴムやナイロンの袋を水田に直接投下し、衝撃で爆破させ、有毒の除草剤を飛散させる方法へと改良された。大量の除草剤が水田を灌漑する水域にも投下され、その後40年間にわたって河川や土や人々を汚染し続けた。
 カコジル酸を有効成分とするヒ素系除草剤は、現在も除草剤として使用されている。米国ではゴルフ場や個人の家の裏庭に至るまで広範に用いられている。綿花畑でも収穫前に作物を枯らす目的で散布されている。商業用タイプのエージェント・ブルーはあまりに一般的で高い利益をあげるため、2004年2月に米環境保護局が部分的に統制を解除した10種類の殺虫剤、殺菌剤、除草剤の中に入れられた。肉や牛乳、家禽類、卵の残留毒性の特定制限値も撤廃された。
 エージェント・ブルーそのものより毒性の低いこの商業用除草剤でさえ、頭痛、めまい、嘔吐、激しい下痢をもたらし、その後、脱水症、電解質不均衡、血圧低下、知覚麻痺、けいれん、全身麻痺をきたし、3日〜14日間以内に死亡する可能性があるという。水田に投下されたエージェント・ブルーに直接曝された人々の苦しみはどれほどのものであっただろうか。
 米農薬企業の製品と米国の軍事化学兵器計画に関連性があったため、エージェント・オレンジをはじめ、ホワイト、ピンク、グリーン、パープル、ブルーの薬剤の使用停止の決定がもたらされた。ガブリエル・コルコ(トロント・ヨーク大名誉教授で「ベトナム戦争全史」著者)はこう語っている。「ニクソン政権が枯れ葉作戦を停止したのは世論の抗議や道義的反省からではなく、ベトナムでの除草剤散布によって国内向けの除草剤が不足したからである・・・」。
 40年後、これらの化学兵器を製造した企業は、新たな世論の批判に直面している。2004年1月30日、ベトナム枯れ葉剤被害者協会(VAAOV)が12の米化学企業を相手取り、ニューヨークの米連邦裁判所に集団訴訟を起こしたのである。この中には1984年にインドのボパールでユニオン・カーバイドの悲劇をもたらしたダウ・ケミカル社も含まれている。ユニオン・カーバイドの事故は2万人の死者と14万人の負傷者をもたらしたが、ダウ・ケミカル社はその後20年間処罰されないままである。今回訴えられた企業の中には、農薬企業の大手、モンサント社も含まれている。モンサント社は除草剤により莫大な利益を上げ続けているが、ホーチミン市の事務所を通してベトナムでの除草剤販売でも利益をあげている。
 モンサント社は世界有数の遺伝子組み換え推進企業でもあり、農民の除草剤依存を維持するために作物の遺伝子組み換え操作を行い、生命特許によって農民をさらに依存させようとしている。つまり、われわれはコメ消滅作戦の新たな悲劇に直面している。モンサント社は今後3年間で、ベトナムを含むアジアの農民を対象に、遺伝子組み換えの稲を放出する計画である。
 2004年はベトナムの枯れ葉剤被害者が、米化学企業に対して歴史的訴訟を起こした年であるだけでなく、国連による国際コメ年でもある。「コメは命」をスローガンに、国連食糧農業機関(FAO)は、2004年を「コメを基盤とする生産システムの生態的、社会的、文化的多様性を、地球の主要関心事に取り組むための多面体として讃え、促進する機会とする・・・」と宣言した。しかし、この機会はすでに失われている。より正確に言えば、売り渡されたのである。FAOは国際コメ年の担当機関としてこの機会に遺伝子組み換え産業を支援することを決めた。もはやコメや生物多様性の文化的重要性について語る意味もなければ、生態的社会的に持続可能なコメの生産を支援する必要もない。農民の権利や生活について語る必要もないのである。その代わり、FAOはモンサント社をはじめとする遺伝子組み換え/農薬企業の支援を宣言し、それによって世界人口の半数の主食であるコメの企業による支配を支えている。
 国際コメ年は、進行中のビジネスに対して機会を提供している。米国の軍事的なコメ消滅作戦に関与した企業はいま、コメの未来は我が手にありと宣言している。「コメは命」であるからこそ、米国政府は多額の金と軍事力を費やしてベトナムでのコメ消滅を推進した。コメを支配することは生命を支配することであるからこそ、米企業はいま、コメを標的としている。これに抵抗し、水田や自分たちの体を有毒な農薬で汚染しないようコメを栽培したいと思い、企業によるコメの特許を阻止しようと考え、コメは命であるからこそ守りたいと考える人々は新たな闘いに直面している。権力を持つ政治家と企業エリ−トの哲学は今も変わらない。生命を支配できなければ殺してしまえ、である。

 この原稿はグリーンフィールド氏が「フォーカス・オン・ザ・グローバルサウス」
誌(2004年6月3日)に寄稿したもので、氏の了解を得て再掲載するものです。

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遺伝子組み換えコメが現実に 03.10

 2004年は国際コメ年(InternationalYearofRice2004)です。公式行事はこの10月31日に第58回国連総会でのFAO(国連食糧農業機関)ディウフ事務局長の演説で始まることになっています。きっかけは食糧不足・貧困・人口増加という問題を解決するためにコメを中心とした生産システムを開発することが必要だとして取り組みが決まったものです。つまり持続可能なコメ生産や食糧主権の確立に向けて闘っている農民にとって画期的なイベントの年である筈です。
 ところがモンサント、シンジェンタやバイエルなどの巨大会社は、コメ作りで農薬使用を増やすと共にGMOコメを宣伝する絶好の機会にしようとしているのです。既に今月、バイエルクロップサイエンス社はアメリカ政府からGMOコメの販売許可を受け取っています。それは国内で売り上げが伸びているLLRICE62(LibertyLinkrice)と呼ばれているものです。バイエル社は日本の消費者にもLLRICE62の販売が出来るよう許可を受けています。
 LLRICE62はバイエル社が開発した除草剤にも強い遺伝子学的に作られたものです。この最初のGMOコメは2004年3月に植え付けされることが予想されています。GMOコメの脅威は今や非常に現実的なものとなっているのです。

ジェラルド・グリーンフィールド
2003/10

注)筆者はグリンピースの活動家でベトナム人。現在は
タイのバンコックを拠点に活動している。数年前から
世界的な農業情勢を全国農団労に提供して頂いて 
いる、われわれの運動の良き理解者である。

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