委員長のひとこと……Q & A
Question
Answer
結論としては、正職員として採用し、試用期間中に職員としての適格性に問題があるとの理由で契約社員への変更は出来ません。但し、当該職員の同意があれば別です…。
そこで、使用者としては、正職員の雇用契約を解約し、あらためて契約職員として雇用するという雇用契約の申し込みをすることになります。当該職員がこれを承諾しない場合、使用者は正職員として雇い続けるか、あるいは、一方的に正職員の雇用契約を解約する、即ち、当該職員を解雇することになります。
ところで、当該職員が契約職員としての就労を合意せず、また、使用者も当該職員を正職員として雇用することを望まないのであれば、使用者は当該職員を解雇せざるを得ません。問題は、その解雇が、その理由の面で通常の解雇とどのような取り扱いの差異を認められるのかということです。
但し、試用期間中の労働契約は、試用期間後の労働契約と同一の労働契約であり、ただ試用期間の、従業員としての適格性判定のための期間という性質から解約権が留保されているにすぎないとみるのが一般的な考え方なのです。然し、解約権留保といっても解雇が許容される場合はそれほど多くはないと考えることが必要です。特に、新卒者の定期採用の場合、新人なのですから、業績がベテラン(経験者)と比較して低いことは当然で、それ以外に勤務成績が悪いといわれるのは、設問のように当人の人格や行為一般の問題点を指している場合が多いのではないでしょうか。それは通常の解雇と同様、解雇権の濫用にあたるかどうかの問題です。
設問の場合も、当該職員の言動の不適切性の程度によって結論が異なると思われます。通常の正職員が、同様の言動をとった場合には、解雇するといった程度のものであれば、契約職員としての採用を申し出て、当該職員がそれを拒否すれば解雇することもやむを得ないと考えることが常識的な判断であると考えられます。
問題は、この間の研修において『なぜ』直せなかったのか…研修の中身等について労働組合としても検証し、今後一定注視する必要もあるのではないでしょうか。いずれにしても、今回の場合は前記した事を考慮し、農協側に具体的『理由』の情報開示を求め、対応を検討することが必要なのではないでしょうか。
不当か否か…おかしければ使用者としての姿勢を正さなければなりません。労働組合員であるとかないとかの問題ではないのです。働く職場の問題なのです。
また、労使間の懲戒委員会などの機関が存在する場合は、その活用も必要なのかもしれませんね。使用者つまりは組合長の一方通行的な判断だけではだめなのです
まず、解雇と退職の違いについて考えます。
解雇とは、労働契約を使用者が一方的に解約することです。労働契約が解約されると、労働者は、生存の危機に直面します。そこでわが国の法制度の中では、労働者を保護するために解雇制限や解雇予告または解雇予告手当支払いの義務を使用者に負わせています。更に、解雇するには、実質的に『正当な理由』が必要とされ、正当な理由のない解雇は、解雇権の濫用としてその効力は無効とされます。
ところで、解雇の種類には、普通解雇、懲戒解雇、ユニオンショップ協定に基づいてする解雇、定年による解雇等があげられます。
普通解雇とは、労働能力が低く業務に適用できない場合、勤務成績が不良の場合、職場での協調性が欠如している場合、心身が病弱なため業務に耐えられない場合、雇用調整で従業員を減員する場合などです。
懲戒解雇とは、従業員が不祥事を起こし、企業の経営秩序を維持するため就業規則の懲戒規定に該当した場合です。懲戒解雇には、これより少し程度の軽い諭旨解雇があり、従業員を諭したうえで解雇の措置を採る場合があります。
一方、退職の場合には、企業と従業員が合意して労働契約を解約する場合、従業員が一方的に契約を解約する場合、定年による退職の場合、死亡による退職の場合などがあります。
解雇も退職も同じ点は、『労働契約が解消される』ということです。
質問の事案については、農協の財産を着服した不正行為があり、これに対して、労働契約上の懲戒である懲戒解雇を行うというのであれば、これについては手続き上難しい点はないと考えられます。
この事案で、貴農協では、Aさん本人の将来を考えて、自己都合退職にしたいということで、このことは、Aさんにとっては、温情ある有利な扱いですから、法律上も違法性の生じる余地は少ないと考えられます。
また貴農協では、懲戒解雇の場合には退職金は支給しないとの就業規則ですから問題はありませんが、『自己都合退職の場合には、退職金を支給する』と規定されていると想定できます。Aさんを自己都合退職扱いとしたのですから、そうすると他の自己都合退職と同様に、例え懲戒解雇の事由があったとしても、規定上、退職金は支給しなければならないことになります。その支払いの程度については、規定があればそれによることになります。
なお、退職金も賃金と解されます。労基法に定めるところにより、全額支払いが原則とされます。但し、Aさん自身が退職金を放棄するというならば、それはそれで有効と言うことになります(裁判例から)。
よって使用者はAさんに対し、『事由の大きさ』から本来ならば『懲戒解雇』ではあるが…きちんと説明し、退職金については『辞退』させることが過去の例からしても公平性を期す点からも本来ではないでしょうか。また、労働組合としては懲戒委員会の決定と農協側の最終判断に整合性があるのか否か、きちんと整理し、後々のための確認を行うことが重要です。
基本的には今日の時代背景から考えて不祥事は不祥事として許されないとの判断が求められているのではないでしょうか。そうでなければ職場は混乱します。
先ず、労働組合側にとっては、団体交渉の記録を正確にとることは非常に有益であるし、原則的な活動です。例えば、規約等の解釈が問題となったときなどは団体交渉の記録は何よりも役に立ちます。団体交渉の途中などには、交渉事項につき問題点ごとに確認をしておくことも重要です。そして、毎回の団体交渉の終了時には、その日の団体交渉の内容を確認し、前回の団体交渉からの進展度、組合側の要求と農協側の回答の齟齬、農協側の再回答の期限などをきちんと確認することも労働組合としては重要です。現単組の多くがこの団体交渉の流れを行いきっていないことに組織停滞の要因となっています。結果的に団対交渉の回数が少なく思ったことの半分も主張仕切れていません。反省すべきことです。
さらに重要なことは、農協側が次回等の団体交渉で『そのようなことは言っていない』とか『そのような事項は確認していない』といったことを述べて水掛け論になることを防ぐ意味でも正確な議事録を記すことは労働組合活動としては当然のことなのです。
勿論、経営者側からすれば警戒感があらわとなり、即刻中止を求めてくることは必然的な行動でしょう。その場合農協側としては、気になるのであれば、率直にテープレコーダーの使用の意図を労働組合側に資し、農協側の意見や希望等を述べ、不使用を求めてくるのが本来の経営者というものです。
一方的な通達を持って応じなければ団体交渉には応じられないとする行為は、不当労働行為は無論、信頼ある労使関係は醸成しません。結果として健全な農協運営は行われないということになります。
何れにしても、団体交渉は労使間の約束事を確認し合う場です。確認した内容を文書化することは当然の活動でもあります。議事録を作成し労使双方の責任において捺印する必要があります。労働組合としてテープレコーダーでの記録は行わないのであれば議事録を互いに確認し、署名・捺印することを慣行とすることです。
組織の多くが、この議事録を労使双方確認していないことから『水掛け論』団体交渉となり要求事項が進展しないのではないでしょうか。原理・原則的な活動から始めることが肝要なのです。団体交渉を大切に取り扱いましょう。
労働者が農協に損害を与えてしまった場合、例えば、組合員からの預金の預かり金などを横領した場合、労働者に損害賠償の責任が発生することになります。(民法415条または民法709条)
このように労働者が損害賠償責任を負う場合、身元保証人にも責任を負わせるのが身元保証で、『従業員の行為によって会社(農協)が被った損害を賠償することを約する』契約です(身元保証法第1条)。身元保証契約については身元保証法によって規制されており、身元保証人の責任範囲を合理的な範囲に制限しています。よって、この法律の規定よりも身元保証人に不利な契約は無効とされています(身元保証法第6条)。かりに農協側が何でもかんでも全てにおいて身元保証人を呼びつけ賠償を求めることは逸脱行為です。
この法律の主な内容は以下のとおりです。
身元保証の期間について、契約に期間の定めがなければ3年で終了します(身元保証法第1条)。契約に期間の定めをする場合でも5年が限度であり、5年を超える契約は5年に短縮されます(身元保証法第2条)。合意による更新は可能ですが、自動更新の規定は無効とされています。また、使用者は、労働者に一定の事由が生じ身元保証人の責任が加重される可能性があるときなどは、身元保証人に対し通知する義務があります(身元保証法第3条)。この通知を受けた身元保証人は、将来に向けて身元保証契約を解除することができます(身元保証法第4条)。身元保証人が負担すべき責任の範囲については、会社(農協)側の過失や保証をするに至った経緯その他一切の事情を考慮して裁判所が定めます(身元保証法第5条)。
そこで設問の意味ですが、身元保証契約は長くても5年ですから、それ以降労働者が損害を発生させても身元保証人に責任の追及はできないということです。また、基本的に10年も農協に従事すればその教育は農協の責務ではないでしょうか。労働組合としてはその是非について労使協議を徹底することです。その上で法律にそった形での身元保証契約を結ぶ確認を行うことです。
当然、労働組合としての要求となります。先ずは自農協の『身元保証』制度を検証し、対策・対応の具体化を…。
労働の現場では、就業規則や労働協約に記載されていない特別の扱いや、就業規則や労働協約と違った扱いが長年続いていることがあり、それが、労使双方にとって職場のル―ルと考えられていることがあります。これを労使慣行と呼びます。
労使慣行が、民法に定める『事実たる慣習』の効力により労働契約の内容になっていると考えられる限り、その労使慣行を使用者の一方的な判断で破棄することは許されません。然し、労使慣行が単に事実上のものにすぎず、労働関係の内容になっていないと考えられれば、使用者がある時からこれを認めないといったときは、労働者はそれに従わざるを得ません。
それでは、労使慣行が労働契約の内容となっているかどうかはどのように判断されるのか。この点について、裁判例は、@同種の行為または事実が反復継続して行われていること。 A労使双方が、その行為・事実を明示的にしていること。B当該労働条件について決定権ないし裁量権を持つ者が『規範意識』をもってこれに従っていたこと、などが必要とされます。この『規範意識』とは、これに従わなければならないと考えているという意味です。
そこで、設問についてですが、管理職の賞与手当について、従来から労働組合と妥結した月数の賃金額を支払ってきたということですから、@およびAの要件を満たすものと考えられます。ただし、Bについては、使用者として、管理職の賞与手当についてそのようなはっきりした方針があって行ってきたとはいえないと考えるのが一般的です。管理職の賞与手当を労働組合との妥結内容に従って支払うことは、労使慣行として労働契約の内容になっていたとは考えられません。従って、これを変更して管理職の賞与手当を引き下げることはできますが、法的拘束力のある慣行とはいえなくても、事実上長く行われてきた管理職にもそのような期待が生じていると思われますので、使用者は事前に状況をよく説明し、理解を求めておくことは当然の責務です。
また、労働組合としては経営状況を把握・分析し、出来得る限り管理職にも年間協定の締結にそった支給を求め努力(交渉)することが必要です。そのことによって職場全体としての『頑張ろう』という職場の士気に繋がるのではないでしょうか。
使用者は、労働契約に基づいて、労働者が業務を遂行するにあたり指揮命令する権利があります。これに対応して、労働者には、使用者の業務命令に従う義務があります。労働者が業務命令を正当な理由なく拒否すると、契約上の義務違反の責任を負うことになります。その違反行為が契約上信義則に反する重大なものであれば、使用者は労働者を解雇することもできます。例えば、業務で集金した現金を横領したとか、多数回無断欠勤を続けた場合など、です。また使用者は、その違反行為が経営秩序を著しく乱したものとして、懲戒罰として解雇処分を行うことがあります。
懲戒権を行使するにあたっては、どんな行為が経営秩序違反であり、どんな種類の懲戒が課されるのか、就業規則に定めておくことが必要となります。従って、就業規則に定めのない懲戒処分はできません。
よって、労働組合としてはこの就業規則に定める段階でキチンと関与し、対応することが先ずは必要となります。その上で『懲戒委員会』の細則を協議し、労使確認(協定)することです。
また、新たに就業規則に規定した場合は、それ以前の行為に対して遡って適用することはできませんし(不遡及の原則)、同一の行為に対して2回の懲戒処分を行うことも許されません(一事不再理の原則)。
懲戒処分は、規律違反の種類・程度・その他の事情に照らして相当なものでなければなりません。(相当性の原則)。この点については、行為の動機、態様、損害の程度、企業の業務に及ぼした影響等諸事情に照らし、合理的、客観的な裁量権の範囲が存在するのであって、裁量権の範囲を逸脱し、より軽い処分を選択すべきを重い懲戒解雇処分をなしたような場合には解雇権の濫用として無効になると述べる裁判例は多数存在しています。
同じ規定に同じ程度に違反した場合には、同様の事例についての先例を踏まえた上で、これに対する懲戒も同一種類、同一程度でなければなりません(平等取り扱いの原則)。
よって、労働組合としてはこうした考え方をキチンと把握し、懲戒委員会等での対応を行うことが必要です。決して使用者の報告・決定に基づき懲戒委員会を決審してはならないということです。
そこで設問の事例についてですが、例えば、集金を使い込んだこと、会議等での態度指摘など上司の指摘無視などを、包括的に全体として一回の職場規律違反行為をとらえた場合は、一個の懲戒処分を課すことはできません。懲戒処分の内容は、先例と照らし合わせて相当な処分を課すことになります。
また、設問の問題事例を順次別々の職場規律違反行為ととらえ、2つの懲戒処分事由があるとして、2個の懲戒処分を課すことはできないわけではありません。然し、この場合も、このような懲戒処分の手法が、先例と照らし合わせて妥当であることが必要です。より慎重な対応が求められると考えるべきです。
いずれにしても、『懲戒処分』とは、個々人の人生を左右すべき問題でもあります。よって、労働組合としては前記した最低限の事柄は理解し、対応・対策することが問われています。さらに懲戒権の濫用には組織の総力を挙げ向き合うことが必要です。
『休職』とは、労働者を労務に従事させることが不可能または不適切な場合、労働協約や就業規則などで定めた一定期間、職員としての身分を保証する一方で、労働の義務を免除する制度です。
今回のケ―スでは、勤務先の農協が就業規則などで休職期間を3ヶ月と定め、その期間が満了した場合は退職となる規定を設けていると思われます。結論的には3ヶ月を経過しても復帰困難の場合は、残念ながら退職せざるを得ません。その場合は解雇ではなく『自然退職』という扱いになります。
休職には主に、労働者の個人的な理由により働くことができない状態になった場合の『傷病休職』や『事故休職』、刑事事件で起訴された場合の『起訴休職』、公の職務のため、農協の職務に就けない場合の『公務休職』、農協の都合による『出向休職』などがあります。
今回のケ―スの傷病休職は、一定期間の猶予を設けて傷病の治療を機会を与えるという『解雇猶予期間』としての性質を持ったものと言えます。そのため休職期間を経過してしまった場合は、『自然退職』となります。
労働者の休職制度自体は法律でその内容が規定されているものではないので、休職制度を定めるか否か、またその期間は農協の自由意思に任されます。そのため、休職制度を定める場合は、期間や復職の要件などに関して任意に決定することができます。
よって、労働組合が存在する場合は前述した労働協約の締結にあたって、事細かに労働者が安心し職場復帰可能な定めを取り決めなければならないと言うことです。
いずれにしても、休職制度をその事業所の全労働者に適用させる場合、休職に関する事項は労働基準法により労働者に対して明示しなければならない労働条件の一つとなります。農協は必ずその内容について労働者に口頭または書面で通知しなければなりません。ここでも労働組合としてのチェック機能が問われています。
相談のケ―スでは、ケガの内容が思わしくなくもう少し期間が必要であるならば労働組合へ相談し、医師の診断書等を提出し、休職期間の延長や働くことが可能な他の部署への一時的異動などを検討するなど農協側と何らかの形で話し合いを行うことが必要ではないでしょうか。
また労働組合もその使命を果たすために最善の努力をおこなうことは組合員である以上、必然的なことです。労働協約等の改善も含めて…。
通勤手当も賃金の一部ですので、原則的には通貨で支払わなければなりません(労基法第24条の1)。この原則に言う『通貨』とは、日本で通用するお金のことですから、外国の通貨は無論、いわゆる現物給与は禁止されています。
この賃金通貨払い原則の例外が許されるのは、『労働協約に別段の定めがある場合』です。従って、労働組合とその旨の労働協約を締結するならば、問いの様な通勤手当の支給も可能と考えられます。この労働協約は労働組合法上の成立要件(労働組合法第14条)を満たすことが必要ですが、それで足りますので、賃金全額払いの原則の例外を設定する場合と異なり、多数組合との協定である必要はありません。
但し、当然のことですが、通勤手当をガソリンクーポン券で支給する旨の労働協約を締結したとしても、それは、当該協約を締結した組合の組合員にのみ適用があり、それ以外の職員に原則として適用されません。従って、非組合員あるいは他の労働組合の組合員に対して、多数組合との協約を根拠として現物給与を支給することはできません。
ただ、当該多数組合が事業所の4分の3以上の労働者を組織している場合は、労働協約の拡張適用によって同じ事業所内の非組合員にも当該労働協約が適用されることになりますので(労働組合法第17条)、非組合員にも現物給与の支給が可能になります。また、少数組合の組合員については、その所属する少数組合と現物給与の支給を認める旨の労働協約を締結すれば、当該少数組合の組合員に対しては現物給与の支給が可能になります。
この様に、労使間における交渉の結果締結する『労働協約』によって働く者の条件は大きく左右されるということです。労働組合の活動は常に真剣に対応しなければなりません。同時に個々の『締結――協約』の存在が働く者の組合員のためになるのか否か、を確りと検証し対応することが肝要です。決して経営者のための『協約』化をしないよう……。
代休は、振替休日とは異なり、例えば休日労働に対する代償として付与する場合には、それが法定の休日労働であるならば、無給の代休を与えても割増賃金の3割5分以上を支払わなければなりません。
設問の場合では、時間外労働を通算して所定労働時間に達したときに代休を付与するとのことですから、農協側は該当職員に対し、2割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。つまり、時間外労働時間を通算し、所定労働時間に達したときに代休を付与するという扱いを行うには、当然、賃金に関することですから就業規則にその旨の規定を定めなければならないということになります。また、規定を定めたとしても賃金精算は必要になります。この点、において農協側の認識(労務管理)は事後に代休として休日を設定するので賃金精算も不要であると考えがちなので注意が必要です。導入の考え方がコスト削減のスタンスから行っている以上、恣意的に割増賃金をカットしている場合が想定されますので労働組合へ相談し、対策・対応することが肝要です。また、常日頃より労働組合からのアンケ―ト調査等のおりなど職場実態を報告することが労組員としては求められています。
整理しますと次のようになります。法定時間外労働と無給代休については、先に述べたように、割増分の差額の支払いが必要です。法定内時間外労働について就業規則で割増賃金支払い義務を定めている場合も同様です。
そこで、賃金精算の支払い時期に関して問題が生じることがあります。時間外労働に対して代休を付与する制度を設けていても、一定期間たてば、代休に振替られなかった時間外労働に対しては、それが所定労働時間に達するのを待つのではなくて、当該時間外労働に対する賃金の支払いを行うべきであると考えるのが通常です。
よって、労働組合として実態把握をキチンと行い不利益にならぬよう労使協定を締結し、納得出来得る労働時間とすることが肝要でしょう。
なお、労働組合のスタンスとしては、こうした手法で時間外労働を整理するのではなくキチンとその日の労働として、その対価である時間外手当を支給させることが求められているのではないでしょうか。その上で労使ともに時間外労働を少しでも軽減する運動展開を図ることが問われているのでは…。
- 非正規社員に引き続き正社員までも解雇する動きが出てきましたが『解雇』とは
- 業績が悪いという理由のみで解雇できるのか
- 解雇の条件である4要件を満たせばすぐに解雇が可能なのか
- 特定の正社員を名指しして解雇できるのか
- 希望退職などを募る事をよく耳にしますが希望退職の条件等があるのか
- はじめに、解雇とは企業による労働契約の一方的な解除を意味し、基本的には3つのタイプがあります。社員の側に原因がある場合が『普通解雇』『懲戒解雇』です。前者は長期間の欠勤や著しい成績不良などで労働者としての適格性を欠けていると企業が判断した場合、後者は違法行為などの処分に適用されます。もう一つの『整理解雇』は企業の都合によるものです。景気後退に伴う人員削減はこれにあたります。
- つぎに、業績が悪いという理由だけではすぐに解雇出来るとは限りません。複数の条件を満たしていないと裁判所から『無効』と判断される可能性もあります。@解雇の客観的な必要性の存在 A回避する努力を払ったのか B対象者の選定基準が合理的に行われたのか C労働組合や社員に対する十分な説明と協議は、これを『整理解雇の4要件』といいます。 具体的には、整理解雇を迫られるほどの厳しい経営状態でなければならないということです。配置転換や出向などの雇用調整対策を事前に講ずるとともに、整理解雇の時期や規模を社員にきっちりと説明することも求められています。
- ではこの4要件を満たせばよいのか、ですが、社員を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告しなければならないとされています。予告期間を置かずに解雇するには、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。また、20日後に解雇すると予告するならば、10日分の同手当を支払う必要があります。
- 社員を名指し解雇することは、整理解雇の4つの要件に示されているように、選定基準が合理的であれば可能だと考えられます。全社員を解雇する必要がなければ、何らかの方法で対象者を決めなければならないでしょう。その場合考えられる措置としては『業績への貢献度、解雇したときの家庭の経済的損害度合いなどを考慮して総合的に決められるのが一般的』です。気に入らない社員だけを対象者にするような恣意的な行動は認められません。
- 希望退職制度は整理解雇を避けるための雇用調整対策の一つです。退職金の上積みを中心に通常より有利な退職条件を用意し、一定期間内に目標人数を設定して実施します。対象者を職種や勤務地などで限定することもあります。基本的には応じるか否かは社員に委ねられます。強制は出来ません。 業績変動に関係なく日常的に『早期退職優遇制度』を持つ企業も多々あります。 この場合の措置としては、社内の年齢構成の歪みを修正したり、社員の独立を支援したりする目的で、緊急避難的な希望退職制度とは異なります。
信用・共済部門に渉外外務員制度を採用している農協は、今日の段階ではほぼ全ての農協に位置づけられていると考えられます。そしてその業務形態は、農協のおかれている地域事情等を反映して、昼間型のパタ―ンと、昼間業務に加え夜間推進が必須であるパタ―ンがあります。
そこで渉外員の労働時間管理についてですが、@通常の労働時間管理で行うのか A事業場外労働(労基法第38条)による管理を行うのか、業務の実態に即してどちらが合理的な妥当な管理か選択することになります。
先ず、質問の場合で考えると、渉外員の主たる労働の形態は事業場外労働であるが、その労働時間は就業規則で定める始業、終業の時刻内におさまっているとみなされます。労基法の定める事業場外労働は、事業場外で使用者の指揮監督の及ばないところで労働するという要件に加えて、『労働時間が算定し難いとき』という要件があります。貴農協の渉外員の場合は、この『労働時間が算定し難いとき』にはあたらないと推測されます。それゆえ事業場外労働としての扱いは無理であり、通常の労働時間管理で管理することになります。よって、渉外員が帰所後業務の整理等のため終業時刻をすぎていわゆる残業となった場合は、当然割増賃金支払いの対象となります。
ところで、渉外員の業態で夜間推進が常態となっている場合、事業場外労働の扱いが可能なのか、ということについて整理しておきます。
事業場外労働とは、労働そのもののことではなく、事業場外で業務に従事し、且つ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難なとき、所定労働時間労働したとみなしたり、その業務遂行のため、所定労働時間を越えて通常必要とされる労働時間労働したものとみなすという、労働時間の計算の方法を定めたものなのです。
よって、夜間推進が日常的に発生し、管理者はとても何時仕事が終わったのか管理できないような実態がある場合、事業場外労働の『みなし労働時間制』は法的には導入し得るし、キチンとした労務管理が運営されるならば合理的な管理方法となります。
このみなし労働時間は、@所定労働時間労働したものとみなすのか Aその業務を遂行するため、通常所定労働時間を超えて労働することが必要な場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間、労働したとみなすの二つのどちらかを選択することとなります。夜間推進が常態の場合は、Aとなるでしょうが、所定労働時間を超えているわけですから、その超えた時間、常に割増賃金は支払わなくてはなりません。
然し、例えば午後7時まで労働したとみなした場合には、実際の時間がオ―バ―していても午後7時までの労働とみなされ、また逆に早めに推進が終了しても午後7時までは働いたとみなされます。このような方法を取り入れるため、労働時間算定のトラブルをなくすため、最も事情に通じている当該事業場の労使で協定を結ぶことが必要となります。
なお、みなし労働時間制を実施しても、曜日等によっては一部または全部内勤ということも発生するわけですから、その場合の対応等についても労使協定で定めておくことが肝要です。さらには、渉外員手当が支給されていると思われますので、それで時間外手当と相殺といった事例も多く見受けられます。その場合、この手当の性格は、事務職場の仕事とは異なる特殊勤務手当なのか、旅費日当にあたる実質弁償的なものなのか、それとも時間外労働の割増賃金相当分なのか、明白にし対応しておくことも必要です。
いずれにしても、労働組合としては事業場外労働『みなし労働時間制』の意義と内容を職場実態との関係から精査し、労使間の協議を進めることが求められます。そのことができてはじめて経営者側の労務管理の能力が高まるのではないでしょうか。
先ず、試用期間について整理しておきます。使用者は、雇い入れの時点では労働者の資質、能力、適正などについて十分な判断ができないことがあるので、雇い入れ後期間を限って本人の勤務態度や実績などをみて本採用を拒否することができる制度があります。これを試用期間といいます。
使用者は採用の段階においては、採用するかしないかについて広範な自由をもっています。然し、いったん採用すれば、試用期間が存在しても期間の定めのない労働契約が成立し、職業上の適格性がないとか能力が足りないというときに解約(解雇)できる権利があるだけです。判例では、この解約権を行使して本採用を拒否できるのは、『解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的に理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合』であるといっています。
この合理的な理由とは、当初知ることができなかった事情に限られますが、本採用後の解雇の場合よりは広く解釈されていることは否定できません。
試用期間の長さは、就業規則や労働契約で定められますが、不当に長いときは認められないことは当然です。例えば、6カ月の試用期間後さらに6カ月から1年の試用期間を経ないと正社員にはなれないとした制度に対し、後者の部分を無効とした裁判判例もあります。
結論として試用期間の延長は、就業規則に規定がない限りは認められません。また、就業規則に規定がある場合でも、労働者の身分をいっそう不安定にするものですから、延長が必要な特別の事情がないかぎりは許されないことになります。
労働組合としては前述した判例や考え方を参考にし、使用者側と協議することが肝要です。試用期間とか労組員ではないなどの問題ではなく働く者の雇用と身分の問題であり使用者側が一方的に試用期間を延長したり、解約・解雇することがあってはならない、ということです。
職場風土の確立に対し、労働組合として真正面から対峙すべきでしょう。
本人が社会に役立ちたいと自発的に行う無償の活動が「ボランティア」です。
ところが、近年、賃金コストを削減するために、名目だけボランティアにして労働者を雇い、または農協では産業祭り等に対しボランティアとして出勤してくれ等と「ボランティア精神」を前面に出し、賃金コストを削減のため平気で労働基準法違反を侵す経営者が後を絶ちません。いずれにしても、名目だけボランティアにして労働者を雇い、労働基準法を下回る違法な労働条件で働かせる悪質な事例が少なくありません。
労働者であるかどうかは、指揮命令の有無、出退勤管理や労働時間管理等を基準に判断されます。これらについて拘束力が強ければ、自発的なボランティアとはとても言えません。形式や名目に拘わらず、労働者であるとみなされ、労働基準法や最低賃金法が適用されることになります。
職場で上司から「5時以降は残業手当が払えないからボランティアでお願いします」「日曜日の行事は全職員参加なのでボランティアで、また、早朝の掃除等は・・・」 等と言われる場合は、使用者による指揮命令であるとみなされ、賃金支払いと割増手当の支払いの対象となることは当然です。
- 最低賃金とは、常用、臨時、派遣など働き方の違いにかかわりなく、全ての労働者の賃金について、使用者はこれを下回る額を支払ってはいけません。法定の最賃には都道府県単位の最低額を決める「地域別最低賃金」と、特定の産業について関係労使の主導で定める「産業別最低賃金」などがあります。
- 追記として、2007年11月臨時国会にて改正最低賃金法が可決、成立しました。施行は2008年7月です。改正のポイントとしては、@全ての地域において地域最低賃金を設定すること、A生活保護との整合性を考慮した設定の明記、B派遣労働者には派遣先の最低賃金を適用すること。C罰則強化など。
また、前記した現行の産業別最低賃金は「特定最低賃金」として継承され、労働協約に基づく地域的最低賃金は廃止となりました。 - 繰り返しますが、現実的な問題として私たち労働組合や職員組合また互助会、様々な組織形態ではありますが、経営者側の方がその姿勢においては悲しいかな、上回っていると判断すべきでしょう。よって、今、必要なことは現実を直視し、その対応を行うべきではないでしょうか。個々の労働協約の存在を求めて安易に法廷闘争を繰り広げることよりも、それぞれの協約を検証し、統一労組結成=新協約締結の運動を積極的に行うことが第一歩ではないでしょうか。
- 勿論、労働組合結成後であっても統一した労働協約を締結したわけではありませんから、現段階では旧農協労使間における労働協約はその効力を有すると考えられます。
- また、協約がなければ労働組合結成が困難になるわけではありません。協約に拘るよりも労働組合結成に全力を尽くし、その後の労使交渉の積み重ねが自動的に労働協約となっていくのです。このことが一番重要なのです。
- 団体交渉を申入れ、『希望退職募集』に至る経営悪化の原因を明らかにさせる。その上で、経営努力の方策を正すこと
- 団体交渉の中で前述@のことが明らかにならない限り労働組合は、『希望退職制度』には応じないことを宣言し、全労組員の意思とすること。
その場合、臨時大会を開催し、その内容を意思を全員の意思とすること。
また、その旨経営者側に明確に伝えること。当然学習会等にて意思確認が必要 - 労働組合としての『希望退職募集』拒否にも関わらず、これを経営者側が強行した場合では、犠牲者が発生しないように万全の対策を講じること
また、『希望退職募集』が個々の該当労組員へ事実上の強制、勧奨にならないよう申入れをすること - 該当者の意志に関わらず解雇が強制される場合は、『解雇権の乱用』として本部・単組・該当者が一体となった法廷闘争を行なう
- 不況による経営上の危機等、人員整理の合理的必要性があること
- 希望退職のほか、残業規制、臨時、季節・パ−ト等の再契約の停止・解雇、配置転換、出向等、人員整理の回避努力を尽くすこと
- 対象者の人選に客観的で合理的な基準が設けられ、その基準の適用が公正に行われること
- 解雇の必要性・時期・規模・方法・整理基準等を、労働組合または労働者と協議を尽くすこと
基本的にはこれだけ長く雇用期間を継続し、一方的に雇用を打ち切ることは必ずしも使用者の自由ではありません。つまり、雇い止めについては、契約更新をする、しないの判断は必ずしも使用者の自由ではないということです。
有期雇用の労働者が短期契約を反復して更新している場合、『期間の定めのない契約と実質的に異ならない』あるいは、『労働者の更新期待は法的保護に値する』と判断される場合が一般的です。例えば、労働者に継続雇用を期待させる使用者の言動があった、契約更新手続きが形式的または全くなく自動更新、特に問題がなければ同じ職場内の労働者も契約されている、などです。
この場合は、正社員など期間の定めのない労働者と同様、整理解雇の4要件(内容は前回のワンポイント参考)をはじめとする『解雇法理、判例』が適用されることになります。以上のことから考えると今回の一方的な雇い止めは無理があるのではないでしょうか。よって、労働組合員でなくても既存の労組に相談し、対応する。または、労働基準監督署等へ出向き相談すること。兎に角、泣き寝入りはやめましょう。勇気を持って相談することが肝要です。
また、厚生労働省告示により04年から、有期労働契約を更新する際には労働者の希望に応じて『使用者は・・・・・契約期間をできるだけ長くするよう努めなければならない』と求められるようになっています。更に08年4月からは改正パ―ト労働者法がスタートし、出来得る限り不安定な中で働く非正規社員の皆さんの地位向上のための施策が打ち出されています。それぞれの立場でよく学習し、活かしていくことも必要ではないでしょうか。
『短時間労働者』の雇用管理や教育訓練について、事業主や地方自治体の責務を定めています。労働条件を明示した文書を労働者に交付することや、就業規則を変更する際に短時間労働者の過半数を代表する人の意見を聴取する努力義務としています。 さらに、改正パ―ト労働法では、仕事内容や転勤などの条件が正社員と同じで、雇用期間に定めのない『正社員並みのパ―ト』について、賃金や教育訓練、福利厚生などでの正社員との差別を禁止。それ以外のパ―トの待遇は、正社員との均衡を考慮する努力義務を事業主に課す。 正社員への転換促進措置や、待遇を決める際に考慮した事項の説明も義務付ける、としています。
管理監督者については、労基法第41条により、同法の労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されません。したがって、1日8時間、1週40時間を超えて労働させた場合でも、時間外労働の割増賃金は必要ありません。
管理監督者については、判例においては「一般的には部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず実態に即して判断すべきものである」とされています。
したがって、課長職以上なら管理監督者であるとか、部長職以上なら管理監督者であるというわけではなく、その者の権限や待遇などの実態から判断することになります。管理監督者に該当するか否かの判断基準を示した行政解釈を簡単にまとめると、次の要件をすべて満たす者が管理監督者になると考えられます。先日のマクドナルド判例でも示されています。
@ 労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者
A 労働時間、休憩、休日に関する規定の規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間などの規制になじまないような立場にある者
B 賃金の待遇面でその地位にふさわしい待遇がなされている者。然し、優遇措置がとられていても実態のない役付者は該当しません。
ここで過去の判例の一部について確認しておきますと、従業員40人の工場の課長について、決定権限を有する工場長代理を補佐するが、自ら重要事項を決定することはなく、また、給与面でも、役職手当は支給されるが従来の時間外手当よりも少なく、また、タイムカ―ドを打刻し、時間外勤務には工場長代理の許可を要する場合には、管理監督者には当たらないとした、判決例も存在しています。特に農協の場合には幅広く管理職待遇として位置づけられており今後問題化されることになるでしょう。実際、労働基準監督署はこの管理監督者の位置づけ等について各農協や企業に対し、立ち入り検査を強化指導しています。
労働組合としては再度自農協の点検を強化し、農協側に改善を求めていくことが急務だと考えられます。本部としてもこの管理監督者の整理をおこない、各単組へ改善要求を求める方向です。
また、労働組合の労組員の範囲については基本的には労働組合自らが決定すべきものであるため、当然労働組合員として位置づけ、共に頑張る職場風土を確立することが必要であることは指摘するまでもないことです。
なお、この管理監督者の問題について鳥取の鳥取西部農協では労働基準監督署が立ち入りに入り現行支店の次長や課長クラスは管理監督者とは言えない、との勧告を受けています。併せて、この1日には厚生労働省から各都道府県の労働局あてに管理監督者の基準とその適正化について通達が示されています。
労働時間とか労働協約問題など、いわゆる集団的労働関係といわれる問題の法律上の対応は、多くの場合その関係にまつわる経過や事実関係が大きな比重を占めるので、単なる法解釈論や判例を判断の基本に置くことには慎重でなければなりません。
その結果、問題を法廷に持ち出すのならともかく、検討の経過で若干歯切れの悪い協議をしなければならないことは一定やむ得ない、と言うことを労使ともに前提としなければならないと考えます。
以下、広域合併発足にともなう労使締結における労働協約の考え方について、若干の整理を行い、確認することとします。
1.はじめに・・・・・労働協約の性格について
@ 労働協約は、労働組合が自然発生的であるのと同様、法律に基づいて存在するものではありません。一言で言えば労働協約は、労使間の「労働条件その他に関する」約束である。それ故に労働組合法においてもとくに定義することなく、「労働組合と使用者またはその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は・・・・・」(第14条)という表現をしているのであり、その内容については何ら触れられていません。
A 他方、使用者が一方的に制定できる就業規則は、その発生においては労働協約と同じような一面もありましたが、使用者の恣意的労務管理を規制するため、その作成は義務づけられ、現行労働基準法では就業規則に定めなければならない事項にまで厳しく定められています(第89条)。
このように労働協約と就業規則は、本質的にその性格を異にし、同一職場における競合を避けるためもあり、「就業規則は」「労働協約に反してはならない」(労基法第92条)と定められているのです。
2.そこで・・・・・合併にともなう労働協約の考え方について
@ 「合併」ということは、それが吸収であろうと新設、対等合併であろうと、法律上は合併農協が旧農協の権利義務関係を包括承継することが原則です。(商法第103条)よって、一農協(連合会)における労働協約も承継されることになります。
A 前述したとおり、労働協約に反する就業規則は、作成しても無効であることから、合併農協としては労働時間等、新しい人事労務施策を展開しようとしても大変な困難に直面することになるわけです。とくに、連合会含め、県域農協合併となると既存の労働協約の対応が重要視されるわけです。
然し、私たちが抑えておかなければならないことは現実的に経営者の皆さんや合併事務局の対応はどうでしょうか。確実に、合併農協の人事労務施策は具体化されつつあります。例えば、就業規則の作成や賃金・退職規定の考え方の具体化、等々です。
私たち個々の労働組合が「合併にともなう労働協約」との関係について法的な手段も視野にいれ、その労使闘争を行うのであれば別ですが、現実的には・・・・・それらの労働協約を活かし、更に納得性のある合併農協の就業規則を作成し、労使間において「○○農協労使労働協約」を締結すべく奮闘することが様々な点において、ベストではないでしょうか。
B そこで考え方として、私たちは労働協約を反故にしようと考えているわけではありません。合併農協の経営方針、人事労務管理方針と整合した協約の改正や現行協約の合意解約、そして、新協約の締結といった方向がより現実的で望まれると考えているからです。これは、労働組合を結成する以上就業規則との関わりは必要且つ急務であり、その上で労動協約を締結しておかないと労使関係にとって必ずしも好ましいこととは考えられないからです。
よって、必要なことは早期に労働組合側の組織機(例えば、連絡協議会)の位置づけと機能を確認し、合併農協の経営方針や人事労務管理施策即ち就業規則について労使間の具体化を図ることではないでしょうか。当然、個々の労働協約を上回る取り組みを行うことです。
仮に、一部農協労組が労働協約の是非について法廷闘争も視野にいれ労使闘争を行うのであればその労組の責任において対応してもらうしか考えられないでしょう。実際問題、各農協の労使関係はそこまでの力量は持ち合わせていない、と考えることが妥当ですから。各労組バラバラの対応では結果として各農協間の労使関係での対応となり働く者の側の労働条件の統一が取れなく混乱を起こすだけです。
3. 経営者の対応として・・・・・想定されることについて
労働組合の方が現行労働協約の維持と向上を求めた要求をする場合、一般的に経営者が行うであろう、対応について考えることとします。
@ 第一としては、協約の有効期間満了まで待つ方法があります。これは、自動延長規定および自動更新規定による労働協約の場合も同じ考え方です。なお、労働協約は、3年を超える有効期間の定めをすることはできない(労組法第15条)から、自動延長等の協約の場合、その協約は、所定の手続きを省いた新協約として考えられ、前協約の有効期間有効であるということになります。
A 第二としては、協約がすでに当初の有効期間を経過しており、労組法第15条に定める解約権を行使できるなら次の方法が考えられます。この解約権の行使は、解約しようとする日の「少なくとも90日前」に記名押印または署名した文書によって行うことができる、とされています。
B 第三としては、事情変更を理由とする協約解約です。協約は継続的な労使関係をもとにした協定ですから、締結当時とは著しい社会経済の事情の変化・変更により、協約事項の履行が当事者に酷である場合です。然し、どのような場合に、このような事情変更の原則の法理が認められるかは、個々の具体的事情によって慎重に考えられることになります。合併において、もし一部労組で労働協約の是非を問い法理的論理(裁判など)を繰り広げればこのことで経営者側は対抗することは想定されます。
以上、合併に関して、労働協約の性格やその解約等について基本的な問題を記してみました。然し、労働協約をめぐる問題はきわめて多様な問題を発生させ、とくに協約の効力に関しては、現実の事情もあり難しい問題を提起しています。例えば、県域(広域)合併農協の場合、それぞれ固有の各農協・連合会が合併する以上、一定の考え方に基づき就業規則の統一並びに労働組合との間において新しい労働協約を締結しなければ職員の士気の点においても事業そのものもマイナス化することが考えられるからです。
ですから多くの県域(広域)合併農協は事前の労働組合連絡協議会において統一した考え方のもとに経営者側との交渉を行い、労働組合結成、労働組合へと引き継いでいるのではないでしょうか。
就業規則に如何なる退職制度も明示していない農協でも、『希望退職募集(@全般的に希望退職を募るA一定年齢を定めて希望退職を募る)』が実施されることがあります。これも純粋に退職希望者を募るのではなくて、ある日突然に、『対象者は退職をという形で……事実上職員の生首を切る』と云う退職勧奨であり肩叩きなのです。選択定年制度と異なるのは募集対象を広げ、或いは退職対象者を絞り込んだ形で行われるのが、一つの特徴です。
『希望退職制度』の一番の特徴は、その根拠が『経営上の理由に』なっていますが、どれくらいの経営危機にあるのか? なぜ、そうなったのか? 等々が明確に論じられておらず人員整理・縮小をすることによって当面の経営危機打開の方向を行なっている点です。即ち、経営の安全策として雇用問題が利用されているというのが実態なのです。過去の例を見ても幾つかの農協では何年か毎に希望退職募集が繰り返されています。またひどい農協では、『希望退職』を募りながら一方では新入職員の募集を実施するなど職員の入替えを行なっているケ−スもあります。
いわゆる『希望退職』という名の人員整理を行なっているのです。これでは何十年もがんばってきた職員の苦労は報われません。
また、この様な希望退職募集で将来的に農協が再建される筈はないのです。農協の事業はどうあるべきか・運営や経営はどうあるべきか、について、労使が真剣に議論し改善すべきは改善していくことが必要なのではないでしょうか。
そこで希望退職制度(募集)に対する態度として
私たちは希望退職制度を安易に職員の希望によって退職する制度と理解することはできません。希望退職募集とは職員にとっては最も冷酷なことです。なぜならば、経営の事情によって経営責任を職員に転嫁する制度だからです。
一般的に多くの職員の意識のなかには希望退職は本人の希望によって退職するのだから、という認識があります。また、本人の事情なのだから労働組合としてタッチできないのだ、という職員もいます。然し、純粋に本人の希望で退職するのであれば経営者側は、『募集』する必要はないのです。本人が希望したような状況を作り退職させていくのが、まさに、希望退職制度(募集)であり、応じさせられた職員は経営の事情によって解雇された犠牲者と云うことができます。
では、こうした解雇に職員は従わなければならないのでしょうか。そうではありません。人間誰しも家族の生活を守る義務があります。農協の職員である以上働く権利があります。就業規則上の解雇条項に該当しない限り希望退職募集に応じる義務はありません。
いま、幾つかの労働組合は希望退職制度を受入れ企業は堂々と人員整理をやっています。私たち全国農団労はこの姿が本来の労働組合運営とは思いません。労働組合結成の目的が雇用と身分の堅持にある以上、徹底して、その要因背景を明らかにし、何が是であり何が非なのかを明らかにする必要が問われています。
その上で、今後の農協の或るべき方向について真剣な議論を求めます。
そこで労働組合としての希望退職制度(募集)に対する対応として
※ 前述@のことが明確になり、なお且つ、経営責任が明確化され希望退職が必要と判断された場合は、様々な内容を整理した労使合意内容を締結し、実施すること。
例えば、具体的募集要領(人員数・対象者の範囲・期間・退職金の優遇措置等並びに、再就職先斡旋の手法またその為の勤務措置等)について労使合意内容を確認する。
そこで解雇に対する基本的な考え方として
特に合併農協において、『選択定年制度:役職定年制度:希望退職制度(募集)』と言う名の人員削減が行われていますが一般的に言われている人員整理(合法性を持条件)とはどういうものなのか、つぎの様に整理されています。
従って、こうした雇用調整の全体の手順の中に希望退職者募集を位置付け募集要領等を作成し実施する必要があるのです。
先ず、企業の存続維持が困難で倒産に差し迫った経営上の必要性があることが絶対的な前提です。解雇しなければ企業倒産を必至とする客観的状況に立ち至った高度の経営危機を言うのであり、一般的な経営状態の悪化・受注減に基づいたり将来の企業実績の増大を見越したいわゆる減量経営を目的とした人員削減は、この経営上の必要性に含まれるものではありません。
経営者に求められるのは、解雇以外のより苦痛の少ない方策によって余剰労働力を吸収する努力をしたのかどうか、即ち、解雇回避努力義務が果たされたのどうか、がポイントになります。
仮に、経営上の必要性が客観的に存在したとしても労使間の信義則に基づき使用者が誠実に解雇回避の努力をしたか否か、が、問われなければなりません。簡単に解雇されることがあってはならないのです。
以上、若干の内容ではありますが『希望退職制度(募集)』についての基本的な態度とその対応について整理してみました。確認ください。
なかまのみなさん、人員整理まがいの農協の退職制度の実態を正しく見抜き、安易に募集を認めたりすることは止めましょう。雇用と身分を確保し生活を守っていくことは労働組合の基本的な問題なのです。雇用を守れない労働組合はその性格が疑われます。また、その為に必要なことは労働組合と言えども現行の農協の何が問題なのかを真剣に考え、改善の方向を探る取り組みを開始することです。
徹底した学習と運動強化をすすめ、全労組員が安心して働ける農協を創りあげましょう。組織強化の参考になれば幸いです。
従業員への就業時間外の研修について、行政解釈では、『労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱いによる出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない』としています。
また、判例でも、会社が休日に従業員に対しておこなっていた教養活動について、@参加するか否かが自由であった A参加を強要されていなかった B参加について出欠をとっておらず、また欠席を理由に不利益な取扱いはおこなわれなかった、ことを理由に、この教養活動は時間外活動ではないと判断したものがあります。
つまり、研修が労働時間でないと認められるためには、@参加するかどうかが自由である A参加を強制されない B参加について出欠をとらず、欠席を理由に不利益な取扱いがなされない、などが要件となっている、ということです。
ということは、逆に考えると、研修への参加が強制されていたり、または研修に参加しなかったことについて、何らかの不利益な取扱いがおこなわれるような場合には、その研修の受講は業務命令により義務付けられていることになります。
そうなると、研修時間は労働時間ということになり、その時間に対して賃金を支払わなければならないことになります。
そこでこの農協の場合ですが、農協の研修は、自由参加となっていますが、実際には研修への出欠状況は一時金などの考課基準に反映されている以上、また、研修に参加しないことによって一時金が減額されるということになれば不利益な取扱いということになります。
更に、研修内容も各従業員の業務のスキルアップを図るものということですから、業務との関連は一層強いと考えられます。したがって、この農協の研修時間は、労働時間に該当すると考え、労使交渉を強めることが必要です。
法令順守が叫ばれる昨今です。労働時間の問題については労働組合も毅然とした考え方と態度を持って対応することが大切です。先ずは、労働時間等の学習会、その上で対経営者との折衝、経営者の理解不能であれば研修会への出席拒否闘争など、また研修会の在り方についても論議すべきでしょう。一般的には各従業員のスキルアップを高めるための様々な研修会は必要不可欠な事でもあります。対立の構図ではなく徹底した協議の基に労使で『その、在り方』について協議することが問われています。
明らかに二重、三重の労働基準法違反です。労基法36条は、1日8時間を超えて労働者を働かせる場合、過半数を組織する労働組合(又は従業員の過半数を代表する者)と使用者との間で、残業理由や上限時間について取り決め、これを労基署に届け出なければならないと定めています。36(サブロク)協定です。『月45時間』と言うのは、残業の上限時間基準を定めた告示の『限度時間』を流用したものだと考えられますが、36協定は『協定で定める時間内なら労働者を残業させても労基法違反にならない』という意味でしかありません。その時間を超えた残業は違法残業です。先ずはこの基本原則を抑えておく必要があります。
また、あなたの農協では、36協定の限度時間を残業代足切りに使っていますが、これは認められません。36協定で定める時間をオーバーした違法残業に対しても、割増賃金の支払いを使用者は免れません。
さらに、残業代を年休や代休と相殺するのもダメです。残業に対する割増賃金の支払いを義務付けている労基法37条に違反します。
以上が法的な側面からの考え方です。労働組合として職場の実態把握を早急に行い36協定のチェックとともに個々人が違法なく働ける環境整備に向けての活動を強化すべきです。
● 36協定の限度時間として、厚生労働省は、1カ月45時間・3カ月120時間・1年360時間など『限度時間』の基準を定めています。『臨時的な必要がある場合』は、月45時間を超える『特別条項付き協定』も可能ですが、この『特別条項』を使えるのは期間の半分(1年ならば半年)までに制限されています。
労働基準法第37条が割増賃金の支払いを義務づけているのは、1日8時間の法定労働時間を超えた分だけです。例えば、勤務時間が午前9時から午後5時で休憩が1時間の場合、所定労働時間は7時間となります。午後5時から6時まで1時間残業しても、8時間の法定労働時間内なので労働基準法上の残業には該当しません。これを『法内残業』といいます。これに対する割増賃金は賃金規定に定めがない限り請求できませんが、残業した1時間分に見合う通常賃金は請求できるので忘れないでください。よって、全くもって賃金がカットされる、ということはありません。
同様に、労働基準法が休日割増の3%%以上を義務付けているのは週1回の『法定休日』です。週休二日制で日曜日が法定休日なら、土曜日出勤は休日割増の対象外です。但し、土曜出勤で働いた分には法内残業と同じく通常賃金の支払いが必要です。さらに、土曜出勤の結果、週法定労働時間の40時間を超えれば、その分は25%の割増賃金の対象となります。
ちなみに所定労働時間と法定労働時間とは、労働基準法32条2項は『使用者は…休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない』と定めています。また、同1項では週40時間以内の労働を定めています。この『1日8時間』『1週40時間』が法定労働時間です。所定労働時間は各企業が就業規則で定めている労働時間です。
よって、労働組合としての対応としては『労働時間に関する基本的な協約』の締結を労使間で結ぶことです。なぜならば労働基準法は『最低基準』。『法内残業』や『土曜出勤』を割増賃金、休日割増の対象とする労働協約を結ぶことは可能であること。また、労働組合の活動の目的の一つに『労働条件の向上』があることを考えれば、当然、要求化し労働の対価としての賃金を求めることは必然の取り組みです。さらには、労働協約は就業規則よりも優位にあることを考慮すれば『労働時間に関する基本的な協約』の締結をめざし、安心して働ける職場環境を求めることは必然の取り組みです。
※ 前記した『労働時間に関する基本的な協約』のポイントとして
@ 時間外労働の定義の明確化 (法定もしくは所定とするのか)
A 日常業務と異なる時間外労働の明確化
B 各事業所の所定労働時間の明確化
C 時間外就労の命令と復命の明確化
D 休日勤務の取扱いの明確化
E 出張勤務および管理職の時間外勤務の明確化
F その他、各農協ごとにおける基準の具体化の明確化
以上の内容を基本に労使協議し『協約』の締結を目指す取り組みが必要です。
36協定(労働基準法第36条)は使用者側に義務付けられています。労働者に時間外労働や休日労働をさせる場合は、事前に当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数代表者―よって存在しない農協等は互助会等を設立し、この代表者としているケ―スが多い)と書面による労使協定(36協定)を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出ることが使用者側に義務付けられています。よって、その締結を行わないで時間外労働を強制した場合は使用者が罰せられます。
また、労働者はその締結がない場合において残業が発生した場合であっても法定の時間外は請求できるし、使用者は支払わなければなりません。あくまでも使用者側が労働者に対し、むやみに労働時間を乱用させないための施策としての協定であると考えていても不自然ではありません。
そこで質問の内容についてですが、労働基準法の各規定は、事業場単位(原則として場所が異なれば別の事業場とされます)で適用されますから、36協定の締結・届け出も、事業場ごとに行うことが原則となります。
このため、協定の締結・届け出の手続きは、本店は本店の分を、支店は支店の分を、事業所は事業所の分をというように、事業場ごとに行うことが原則となるわけです。
では、本店が支店や事業所の分も一括して36協定を締結し、届け出ることはできないのか、この点については、@労働者側の締結当事者が過半数労働組合であることA@の過半数労働組合が本店で一括して手続きを行おうとする事業場の労働者の過半数を組織していること、この2つを満たす場合に限り、本店と当該過半数労働組合の執行部とが36協定を締結し、その他の事業所(あくまでもAの要件を満たす事業所に限ります)では、その協定の内容に基づき、所定事項を届け出様式に記載して所轄の労働基準監督署に届け出ることが認められています。
さらに、前記の2つの条件を満たす場合であって、且つ、本店とAの条件を満たす事業所の協定を一括して本店の所轄労働基準監督署に届け出ることが認められています。
したがって、労働組合がない農協や、労働組合がいずれの事業所においても過半数労働組合に該当しない農協では、本店一括の36協定の締結も、本店一括の届け出も不可能となります。また、過半数労働組合がある農協でも、一部の事業所でその労働組合が過半数労働組合に該当しない場合は、その一部の事業所については、本店一括の締結や届け出は不可能となります。
よって、労働組合としては先ずは過半数労働組合をまとめあげること。その他の様々な労働基準法に基づく協定も過半数労働組合が大きな基点となります。また、この過半数とは全ての従業員を対象としていますので、中途半端な形で非組合員を線引きすべきではありませんし、臨時職員等の組織加入を促進しなければ今日の職員構成から考えて過半数労働組合には届きません。
但し、労働基準法が定める36条の内容は、事業の種類・事業の名称・事業の所在地・労働者数・労働時間の上限、などであることから現状われわれの職場における労務管理(例えば、時間外労働の命令と復命の手法など)や推進事業の内容、振り替え休日等については関連がないことから、労働組合としては、36協定も含めた労働時間の在り方に関する協定の締結を求めることがある意味では必要になります。
なお、36協定の締結は出来得る限り短期間とし、随時その内容に照らして実施されているのかを労働組合としてチェックすることが最も大切な活動となります。
労働者の生活に大きな影響を及ぼす賃金引下げは、経営者の自由ではありません。労働者に対する一方的な大幅賃下げは、個別にはもちろんのこと、就業規則改訂によっても原則としてできないのです。
ただし、こうした不利益が、それを課すことが許されるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のある場合には、労働者は不利益変更に拘束されるとするのが判例です。
整理解雇をしないのだから賃下げは当然、と使用者は主張するでしょう。しかし、裁判例では、『整理解雇を選択しなかったことだけを、賃下げ有効の根拠とすることはできない』と判断されています。したがって、解雇問題とは切り離して、30%という賃下げそのものが例外として妥当か否かが判断されるべきです。その判断基準は『合理性』の有無とされるのが判例です。
その有無とされる判断基準としては、労働者が被る不利益の程度、変更の必要性とその内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、経過措置、代償措置、その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合との交渉の経緯、他の労組や他の従業員の対応、そして同じようなことが社会的にどう扱われているのかを総合的に考慮し、判断されています。
よって、一方的な賃下げは認められない、ということになります。
労働組合としては『雇用と身分』を保障するという観点から、キチンと問題の本質を捉え、安易な形で交渉(提案容認)するのではなくこの間の経営者としての経営努力に対する見極めを行いその上で『経営改善』の方策を明らかにさせること。かりに一方通行的に提案を進めてくるならば労働組合としては、ストライキを含め闘争戦術を駆使して行く必要があることは当然です。最終的には前記した幾つかの点が大きな焦点化しますが、先ずは労使が現行の経営状況について向き合い『経営改善』の方向性を見出すことです。
いずれにしても、労働条件の一方的な不利益変更は認められない。賃金などの変更はより一層の高度な必要性が求められる、ということです。
そういう観点から鳥取県農団労の『いなば農協労組』は頑張って闘争しているのです。全国農団労に結集する仲間の皆さんの最後までの支援を求めます。