委員長のひとこと……Q & A

Question

 正職員採用として面接等の試験を行ない、採用されている職員のことで…然し、研修中の態度(言動や遅刻など)、やる気のない態度を示している、ということで、『1年間は契約職員として様子を見るとのことです』そういう理由で契約社員への身分変更は可能なのでしょうか。
 現段階ではまだ労働組合員としての加入(研修中のため組合費は徴収していない)はしておりません。労働組合としては、どう対応すべきなのでしょうか。


 当農協では先日懲戒委員会が開催され職員Aが、農協の金を着服したとして懲戒解雇する方向となりました。然し、農協側の最終的な判断の下『Aにはまだ将来があり、金額が小額であったことも考慮し、依願退職』の結論に至りました。
 懲戒解雇の場合は退職金は不支給としていますが、依願退職扱いになると退職金は支給しなければならないのでしょうか。不祥事であることは否定できません。退職金を支給することは合意性がないと考えています。労働組合としてどう対応すべきでしょうか。


 当農協の労働組合は以前より団体交渉時にはテープレコーダー等を使って記録していました。然し、今では経営者側の通達(記録するのであれば団交は行わない旨の内容)等もあり使用していません。本来、テープレコーダー等の持込は違法行為なのでしようか。
 また、そのことで団交拒否は不当労働行為ではないでしょうか。現在団交における議事録は労働組合の一方的な作成にて行っています。労働組合としての対応は…。


 身元保証契約(制度)について質問します。当農協では半永久的に身元保証契約の更新が行われています。身元保証契約で、『5年も10年も働いていれば職員の行為に対する責任は経営者(事業主)としての教育責任である』と聞いたことがあります。どういう意味なのでしょうか。そもそも身元保証契約の期間はどうなっているのでしょうか。
 また、労働組合として撤廃の要求を掲げることは可能なのでしょうか。


 私たちの農協では近年賞与については年間協定を締結しています。今年度は年間4.5ヶ月で労使妥結しました。然し、夏の交渉時において管理職(非組合員)についてはこの限りではなく業績支給等々を勘案し支給するとの回答です。従来は労使間で合意した内容を管理職にも適用していましたが、今回は異なります。この措置に問題はないのでしょうか。おそらく若干の減額が想定されます…どうでしょうか。

 懲戒処分に関してお尋ねします。当農協においても様々な不祥事があり懲戒委員会が開催されています。その中で疑問に感じることですが、先日渉外担当者の職員が集金の金額を誤ってしまい組合員からの指摘で発覚(組合員は正当な金額を納めたとの主張)しました。さらにこの職員が常日頃から会議態度等、所属長の指示に対して行動が伴っていないとの理由から懲戒を課す場合、昇給停止と降格の2つの懲戒を課すとのことです。
 また、こうした懲戒のあり方に対する労働組合としての対応等についてはどうなのでしょうか。


 農作業中に転倒し腰の骨を痛めました。現在は療養のため仕事を休んでいます。先日、農協から『休み始めから3ヶ月以内に復職しなければ、規定の休職期間満了により退職となる』という通知を受けました。
 いきなりの通知で戸惑っています。退職しなければならないのでしょうか。復帰してもまだ現場での仕事は多少困難です。労働組合にはまだ相談していません…。


 当農協では通勤費は支給されています。然し、農協側が昨今の経営的な問題等もあり自家用車での通勤者は必ず農協の給油所を利用することとの通達と同時に利用ガソリンクーポン券を支給するとの考えの通告がありました。それはそれで良いみたいな感じはしますが、そもそもクーポン券での支給は労働法で可能なのでしょうか。
 労働組合の同意があれば…、この先様々な点で拡大しないかと不安です。


 当農協にも高年齢者雇用安定法に基づいて『高年齢者雇用制度』が定められています。然し、実際としては、早期退職優遇制度で退職した者を引き続き嘱託として雇用しています(上半期も数名の職員が9月末日に退職し新たに雇用されています)。『高年齢者雇用安定法』の趣旨とは若干異なるような気がしています。抵触することはないのでしょうか。労使の協定は締結されています。
 また、この様な実態が多発しているため何となく職場内の雰囲気が・・・。


 先日の会合にて北海道の仲間から『雇い止め』の撤回闘争についての報告を受けました。私たちの農協でも数年前から採用されていて、突然、上司から『今月いっぱいで契約満期なので辞めてもらいたい』と言われた同僚がいます。
 契約社員なので農協の方針には逆らえないと、退職をしていきました。契約社員なので仕方がないことなのでしょうか。
 労働組合は労組員ではないということ、また相談もなかったということで別段動きはありません。


 当農協では職場離脱制度について数年前から(金融機関として不祥事防止の観点から職場離脱が求められ)、労使の確認にて個々人の有給休暇を消化して対応していました。然し、職場内からの要求として個々人の有給休暇を消化しての制度対応は疑問だとの声があがり、撤廃の要求を労組として掲げています。
 農協側は労使の約束の下での対応であり信義に反するとして応じる気配はありません。有給休暇と労使の協定との効力等も踏まえ、対策と対応のアドバイスをお願いします。


 当労使では交渉終結時において必ず団交議事録を作成し、労使双方の代表者間の締結を行っています。時には部長・書記長間での締結もあります。こうした手法は一般的に指摘される労働協約としてみなされるのでしょうか。今までに農協側から無効との取り扱いはありませんでした。然し、将来的に不安な要素もありますので…。
 当農協の経営者はどちらかと言えば労動協約と言う言葉に過剰反応し、『申合わせ・確認書』などソフトな内容で確認したがりますが、この点はどうなのでしょうか。


 私の農協では残業代のコスト削減という考え方からなのか、残業時間を通算し、それが所定労働時間に達したとき、1日の代休を付与されることになっています。この制度は現場部門が中心です。窓口業務等は時間外支給となっています。法律的にはどうなのでしょうか。代休のみで何らの手当等は支給されていませんが…。
 また、労働組合としての考え方や対応はどうするべきなのでしょうか。


 世界的経済の減速から日本企業も相次いで『雇用』調整を開始しています。大手企業でさえも正規・非正規を問わず従業員の合理化を推し進めようとしています。働く仲間の中に『不安』の連鎖が…。そこで今回(過去にも若干退職勧奨の考え方について整理)再度『業績理由による従業員の削減は??』、について整理しておきたいと思います。


 当農協では、信用・共済部門に専任の渉外職員をおいています。渉外員は、朝定時に出勤し朝礼等を行った後に業務に出発し、昼間帰所することもありますが、ほとんどは終業時までに農協に戻り、夜間推進になるようなことは月に3分の1程度です。
 農協側は、渉外員は1日のほとんどの業務が農協外なので、事業場外労働(みなし労働時間制)の定めを適用して、労働時間の計算をしようと考えています。法律的には問題があるのでしょうか。また、労働組合としての対策・対応は……。


 今年度新入職員が18名程度採用されました。規定により6カ月間は試用期間とされています。ところが私の部署の1名は試用期間が延長されたとのことです。労働組合との話し合いはあったのかもしれませんが…。そもそも試用期間の延長は使用者の一方的な判断で行えるのでしょうか。
 また、試用期間でも労組員ではないでしょうか。労働組合としての対応は…。


 ボランティアと労働者という観点から質問します。
 私のつれあいは福祉の職場で働いていますが、時給はわずか500円で、有給は勿論冠婚葬祭における特別休暇もありません。「あなたたちはボランティアなのだから、最低賃金未満であっても問題ではないし、法違反でもない」と言われています。
 こういうことは法にはふれないのでしょうか。ボランティアとはなんでしょうか。


 先日、農協側から一方的に「雇用を打ち切る」との通告がありました。これまでの雇用期間は1年ですが、もう10年近く更新され農協で嘱託職員として働いています。家庭もありますし、急に解雇通告されても納得がいきません。法律的にはどうなるのでしょうか。仕事内容は勤務時間中は正職員と同等です。今まで頑張って来たのに納得出来ません。
 パ―ト労働法が改正になったとも聞きましたが、どうなるのでしょうか。


 当農協では、課長職以上の管理職については、管理監督者として、時間外労働の割増賃金は支給されていません。先日のマクドナルドなど以降、この管理監督者の位置づけが問題化されていると思います。
 当農協では、管理職手当は支給されています。特に問題は無いのでしょうか。また、労働組合の範囲との関係は・・・。労働組合としての対応などあれば、アドバイスよろしくお願いします。


 いま、あらためて「県域(広域)合併」の動きが加速しようとしています。農団労には加入していませんが当県でも県域合併の話があがっています。合併の是非は勿論ですが旧農協労使間で締結した協約のあり方等について、その協約の存在と効力の考え方について確認しておきたいと考えます。一般論としてでも結構です。基本的内容について教えてください。
 また、労組としての気をつけなければならない取り組みのポイントがあればよろしくお願いいたします。


 今、改めて農協経営の悪化などにともなう県域合併の流れが高まっています。伴い、様々な農協において当面の施策として『退職勧奨、希望退職』等を強行し、乗り切ろうとする動きが表面化しています。私たちのなかまである鳥取県の『鳥取いなば農協』も……。そこで概要ではありますが、希望退職制度について考えて見たいと思います。
 一般的な内容ではありますが、労働組合としての対応も併せて……。


 当農協では土日が休日の完全週休二日制を実施しています。然しながら、各月の始めの土曜日に各従業員の業務のスキルアップを図る、という理由から研修会がおこなわれています。研修は自由参加ですが、現実には出欠状況を確認し賞与や年度の考課基準の対象として加えています。
 研修日は無給です。労組からは休日労働に該当するので一定の手当要求をおこなっています。農協側は自由参加であり労働日には該当しない。よって、手当等の支給はおこなわないとの姿勢です。どう考え、労働組合としてどう対応すべきでしようか。


 当農協では残業時間が月45時間以内と決められています。それを超えた残業には残業代が支払われません。その代わり、月45時間を超えた残業が8時間になると、年休が1日増える制度です。どちらにしても年休は余っているし、何の意味もなく、タダ働きとなっています。法的にはどうなるのでしょうか。


 現職場は毎日残業があります。しかし、割増賃金がつくのは午後6時以降だけです。つまり、終業した5時から6時までの1時間はただ働きです。また、完全週休二日制なのに土曜日に出勤をした時の休日出勤手当もありません。こういうのは労働基準法違反ではないでしょうか。……労働組合としての対応は……。


 現在、36協定の締結については本店、支店、事業所などとそれぞれ労働者の過半数代表者を選出(労働組合の執行委員)して、協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出ています。他組織との交流会で聞いたのですが、その組織では、総務との間で労使検討しまとめて協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出を行っているとのことです。当農協労組としても一括し、対応・対策したいのですが法的にはどうなるのでしょうか。……また、この36協定に対する労組としての対応は……。


 業績が悪化した私の農協では、『整理解雇をしない代わりに賃下げ』という賃金規定改訂の提案がありました。30%の賃金ダウンです。一方的な賃下げは納得できないのですが……労働組合としての対応はどうすればよいのでしょうか……。


Answer

  結論としては、正職員として採用し、試用期間中に職員としての適格性に問題があるとの理由で契約社員への変更は出来ません。但し、当該職員の同意があれば別です…。
 そこで、使用者としては、正職員の雇用契約を解約し、あらためて契約職員として雇用するという雇用契約の申し込みをすることになります。当該職員がこれを承諾しない場合、使用者は正職員として雇い続けるか、あるいは、一方的に正職員の雇用契約を解約する、即ち、当該職員を解雇することになります。
 ところで、当該職員が契約職員としての就労を合意せず、また、使用者も当該職員を正職員として雇用することを望まないのであれば、使用者は当該職員を解雇せざるを得ません。問題は、その解雇が、その理由の面で通常の解雇とどのような取り扱いの差異を認められるのかということです。
 但し、試用期間中の労働契約は、試用期間後の労働契約と同一の労働契約であり、ただ試用期間の、従業員としての適格性判定のための期間という性質から解約権が留保されているにすぎないとみるのが一般的な考え方なのです。然し、解約権留保といっても解雇が許容される場合はそれほど多くはないと考えることが必要です。特に、新卒者の定期採用の場合、新人なのですから、業績がベテラン(経験者)と比較して低いことは当然で、それ以外に勤務成績が悪いといわれるのは、設問のように当人の人格や行為一般の問題点を指している場合が多いのではないでしょうか。それは通常の解雇と同様、解雇権の濫用にあたるかどうかの問題です。
 設問の場合も、当該職員の言動の不適切性の程度によって結論が異なると思われます。通常の正職員が、同様の言動をとった場合には、解雇するといった程度のものであれば、契約職員としての採用を申し出て、当該職員がそれを拒否すれば解雇することもやむを得ないと考えることが常識的な判断であると考えられます。
 問題は、この間の研修において『なぜ』直せなかったのか…研修の中身等について労働組合としても検証し、今後一定注視する必要もあるのではないでしょうか。いずれにしても、今回の場合は前記した事を考慮し、農協側に具体的『理由』の情報開示を求め、対応を検討することが必要なのではないでしょうか。
 不当か否か…おかしければ使用者としての姿勢を正さなければなりません。労働組合員であるとかないとかの問題ではないのです。働く職場の問題なのです。
 また、労使間の懲戒委員会などの機関が存在する場合は、その活用も必要なのかもしれませんね。使用者つまりは組合長の一方通行的な判断だけではだめなのです

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  まず、解雇と退職の違いについて考えます。  解雇とは、労働契約を使用者が一方的に解約することです。労働契約が解約されると、労働者は、生存の危機に直面します。そこでわが国の法制度の中では、労働者を保護するために解雇制限や解雇予告または解雇予告手当支払いの義務を使用者に負わせています。更に、解雇するには、実質的に『正当な理由』が必要とされ、正当な理由のない解雇は、解雇権の濫用としてその効力は無効とされます。
 ところで、解雇の種類には、普通解雇、懲戒解雇、ユニオンショップ協定に基づいてする解雇、定年による解雇等があげられます。
 普通解雇とは、労働能力が低く業務に適用できない場合、勤務成績が不良の場合、職場での協調性が欠如している場合、心身が病弱なため業務に耐えられない場合、雇用調整で従業員を減員する場合などです。
 懲戒解雇とは、従業員が不祥事を起こし、企業の経営秩序を維持するため就業規則の懲戒規定に該当した場合です。懲戒解雇には、これより少し程度の軽い諭旨解雇があり、従業員を諭したうえで解雇の措置を採る場合があります。
 一方、退職の場合には、企業と従業員が合意して労働契約を解約する場合、従業員が一方的に契約を解約する場合、定年による退職の場合、死亡による退職の場合などがあります。
 解雇も退職も同じ点は、『労働契約が解消される』ということです。
 質問の事案については、農協の財産を着服した不正行為があり、これに対して、労働契約上の懲戒である懲戒解雇を行うというのであれば、これについては手続き上難しい点はないと考えられます。
 この事案で、貴農協では、Aさん本人の将来を考えて、自己都合退職にしたいということで、このことは、Aさんにとっては、温情ある有利な扱いですから、法律上も違法性の生じる余地は少ないと考えられます。
 また貴農協では、懲戒解雇の場合には退職金は支給しないとの就業規則ですから問題はありませんが、『自己都合退職の場合には、退職金を支給する』と規定されていると想定できます。Aさんを自己都合退職扱いとしたのですから、そうすると他の自己都合退職と同様に、例え懲戒解雇の事由があったとしても、規定上、退職金は支給しなければならないことになります。その支払いの程度については、規定があればそれによることになります。
 なお、退職金も賃金と解されます。労基法に定めるところにより、全額支払いが原則とされます。但し、Aさん自身が退職金を放棄するというならば、それはそれで有効と言うことになります(裁判例から)。
 よって使用者はAさんに対し、『事由の大きさ』から本来ならば『懲戒解雇』ではあるが…きちんと説明し、退職金については『辞退』させることが過去の例からしても公平性を期す点からも本来ではないでしょうか。また、労働組合としては懲戒委員会の決定と農協側の最終判断に整合性があるのか否か、きちんと整理し、後々のための確認を行うことが重要です。
 基本的には今日の時代背景から考えて不祥事は不祥事として許されないとの判断が求められているのではないでしょうか。そうでなければ職場は混乱します。

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  先ず、労働組合側にとっては、団体交渉の記録を正確にとることは非常に有益であるし、原則的な活動です。例えば、規約等の解釈が問題となったときなどは団体交渉の記録は何よりも役に立ちます。団体交渉の途中などには、交渉事項につき問題点ごとに確認をしておくことも重要です。そして、毎回の団体交渉の終了時には、その日の団体交渉の内容を確認し、前回の団体交渉からの進展度、組合側の要求と農協側の回答の齟齬、農協側の再回答の期限などをきちんと確認することも労働組合としては重要です。現単組の多くがこの団体交渉の流れを行いきっていないことに組織停滞の要因となっています。結果的に団対交渉の回数が少なく思ったことの半分も主張仕切れていません。反省すべきことです。
 さらに重要なことは、農協側が次回等の団体交渉で『そのようなことは言っていない』とか『そのような事項は確認していない』といったことを述べて水掛け論になることを防ぐ意味でも正確な議事録を記すことは労働組合活動としては当然のことなのです。
 勿論、経営者側からすれば警戒感があらわとなり、即刻中止を求めてくることは必然的な行動でしょう。その場合農協側としては、気になるのであれば、率直にテープレコーダーの使用の意図を労働組合側に資し、農協側の意見や希望等を述べ、不使用を求めてくるのが本来の経営者というものです。
 一方的な通達を持って応じなければ団体交渉には応じられないとする行為は、不当労働行為は無論、信頼ある労使関係は醸成しません。結果として健全な農協運営は行われないということになります。
 何れにしても、団体交渉は労使間の約束事を確認し合う場です。確認した内容を文書化することは当然の活動でもあります。議事録を作成し労使双方の責任において捺印する必要があります。労働組合としてテープレコーダーでの記録は行わないのであれば議事録を互いに確認し、署名・捺印することを慣行とすることです。
 組織の多くが、この議事録を労使双方確認していないことから『水掛け論』団体交渉となり要求事項が進展しないのではないでしょうか。原理・原則的な活動から始めることが肝要なのです。団体交渉を大切に取り扱いましょう。

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  労働者が農協に損害を与えてしまった場合、例えば、組合員からの預金の預かり金などを横領した場合、労働者に損害賠償の責任が発生することになります。(民法415条または民法709条)
 このように労働者が損害賠償責任を負う場合、身元保証人にも責任を負わせるのが身元保証で、『従業員の行為によって会社(農協)が被った損害を賠償することを約する』契約です(身元保証法第1条)。身元保証契約については身元保証法によって規制されており、身元保証人の責任範囲を合理的な範囲に制限しています。よって、この法律の規定よりも身元保証人に不利な契約は無効とされています(身元保証法第6条)。かりに農協側が何でもかんでも全てにおいて身元保証人を呼びつけ賠償を求めることは逸脱行為です。
 この法律の主な内容は以下のとおりです。
 身元保証の期間について、契約に期間の定めがなければ3年で終了します(身元保証法第1条)。契約に期間の定めをする場合でも5年が限度であり、5年を超える契約は5年に短縮されます(身元保証法第2条)。合意による更新は可能ですが、自動更新の規定は無効とされています。また、使用者は、労働者に一定の事由が生じ身元保証人の責任が加重される可能性があるときなどは、身元保証人に対し通知する義務があります(身元保証法第3条)。この通知を受けた身元保証人は、将来に向けて身元保証契約を解除することができます(身元保証法第4条)。身元保証人が負担すべき責任の範囲については、会社(農協)側の過失や保証をするに至った経緯その他一切の事情を考慮して裁判所が定めます(身元保証法第5条)。
 そこで設問の意味ですが、身元保証契約は長くても5年ですから、それ以降労働者が損害を発生させても身元保証人に責任の追及はできないということです。また、基本的に10年も農協に従事すればその教育は農協の責務ではないでしょうか。労働組合としてはその是非について労使協議を徹底することです。その上で法律にそった形での身元保証契約を結ぶ確認を行うことです。
 当然、労働組合としての要求となります。先ずは自農協の『身元保証』制度を検証し、対策・対応の具体化を…。

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  労働の現場では、就業規則や労働協約に記載されていない特別の扱いや、就業規則や労働協約と違った扱いが長年続いていることがあり、それが、労使双方にとって職場のル―ルと考えられていることがあります。これを労使慣行と呼びます。
 労使慣行が、民法に定める『事実たる慣習』の効力により労働契約の内容になっていると考えられる限り、その労使慣行を使用者の一方的な判断で破棄することは許されません。然し、労使慣行が単に事実上のものにすぎず、労働関係の内容になっていないと考えられれば、使用者がある時からこれを認めないといったときは、労働者はそれに従わざるを得ません。
 それでは、労使慣行が労働契約の内容となっているかどうかはどのように判断されるのか。この点について、裁判例は、@同種の行為または事実が反復継続して行われていること。 A労使双方が、その行為・事実を明示的にしていること。B当該労働条件について決定権ないし裁量権を持つ者が『規範意識』をもってこれに従っていたこと、などが必要とされます。この『規範意識』とは、これに従わなければならないと考えているという意味です。
 そこで、設問についてですが、管理職の賞与手当について、従来から労働組合と妥結した月数の賃金額を支払ってきたということですから、@およびAの要件を満たすものと考えられます。ただし、Bについては、使用者として、管理職の賞与手当についてそのようなはっきりした方針があって行ってきたとはいえないと考えるのが一般的です。管理職の賞与手当を労働組合との妥結内容に従って支払うことは、労使慣行として労働契約の内容になっていたとは考えられません。従って、これを変更して管理職の賞与手当を引き下げることはできますが、法的拘束力のある慣行とはいえなくても、事実上長く行われてきた管理職にもそのような期待が生じていると思われますので、使用者は事前に状況をよく説明し、理解を求めておくことは当然の責務です。
 また、労働組合としては経営状況を把握・分析し、出来得る限り管理職にも年間協定の締結にそった支給を求め努力(交渉)することが必要です。そのことによって職場全体としての『頑張ろう』という職場の士気に繋がるのではないでしょうか。

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  使用者は、労働契約に基づいて、労働者が業務を遂行するにあたり指揮命令する権利があります。これに対応して、労働者には、使用者の業務命令に従う義務があります。労働者が業務命令を正当な理由なく拒否すると、契約上の義務違反の責任を負うことになります。その違反行為が契約上信義則に反する重大なものであれば、使用者は労働者を解雇することもできます。例えば、業務で集金した現金を横領したとか、多数回無断欠勤を続けた場合など、です。また使用者は、その違反行為が経営秩序を著しく乱したものとして、懲戒罰として解雇処分を行うことがあります。
 懲戒権を行使するにあたっては、どんな行為が経営秩序違反であり、どんな種類の懲戒が課されるのか、就業規則に定めておくことが必要となります。従って、就業規則に定めのない懲戒処分はできません。
 よって、労働組合としてはこの就業規則に定める段階でキチンと関与し、対応することが先ずは必要となります。その上で『懲戒委員会』の細則を協議し、労使確認(協定)することです。
 また、新たに就業規則に規定した場合は、それ以前の行為に対して遡って適用することはできませんし(不遡及の原則)、同一の行為に対して2回の懲戒処分を行うことも許されません(一事不再理の原則)。
 懲戒処分は、規律違反の種類・程度・その他の事情に照らして相当なものでなければなりません。(相当性の原則)。この点については、行為の動機、態様、損害の程度、企業の業務に及ぼした影響等諸事情に照らし、合理的、客観的な裁量権の範囲が存在するのであって、裁量権の範囲を逸脱し、より軽い処分を選択すべきを重い懲戒解雇処分をなしたような場合には解雇権の濫用として無効になると述べる裁判例は多数存在しています。
 同じ規定に同じ程度に違反した場合には、同様の事例についての先例を踏まえた上で、これに対する懲戒も同一種類、同一程度でなければなりません(平等取り扱いの原則)。
 よって、労働組合としてはこうした考え方をキチンと把握し、懲戒委員会等での対応を行うことが必要です。決して使用者の報告・決定に基づき懲戒委員会を決審してはならないということです。
 そこで設問の事例についてですが、例えば、集金を使い込んだこと、会議等での態度指摘など上司の指摘無視などを、包括的に全体として一回の職場規律違反行為をとらえた場合は、一個の懲戒処分を課すことはできません。懲戒処分の内容は、先例と照らし合わせて相当な処分を課すことになります。
 また、設問の問題事例を順次別々の職場規律違反行為ととらえ、2つの懲戒処分事由があるとして、2個の懲戒処分を課すことはできないわけではありません。然し、この場合も、このような懲戒処分の手法が、先例と照らし合わせて妥当であることが必要です。より慎重な対応が求められると考えるべきです。
 いずれにしても、『懲戒処分』とは、個々人の人生を左右すべき問題でもあります。よって、労働組合としては前記した最低限の事柄は理解し、対応・対策することが問われています。さらに懲戒権の濫用には組織の総力を挙げ向き合うことが必要です。

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 『休職』とは、労働者を労務に従事させることが不可能または不適切な場合、労働協約や就業規則などで定めた一定期間、職員としての身分を保証する一方で、労働の義務を免除する制度です。
今回のケ―スでは、勤務先の農協が就業規則などで休職期間を3ヶ月と定め、その期間が満了した場合は退職となる規定を設けていると思われます。結論的には3ヶ月を経過しても復帰困難の場合は、残念ながら退職せざるを得ません。その場合は解雇ではなく『自然退職』という扱いになります。
 休職には主に、労働者の個人的な理由により働くことができない状態になった場合の『傷病休職』や『事故休職』、刑事事件で起訴された場合の『起訴休職』、公の職務のため、農協の職務に就けない場合の『公務休職』、農協の都合による『出向休職』などがあります。
今回のケ―スの傷病休職は、一定期間の猶予を設けて傷病の治療を機会を与えるという『解雇猶予期間』としての性質を持ったものと言えます。そのため休職期間を経過してしまった場合は、『自然退職』となります。
 労働者の休職制度自体は法律でその内容が規定されているものではないので、休職制度を定めるか否か、またその期間は農協の自由意思に任されます。そのため、休職制度を定める場合は、期間や復職の要件などに関して任意に決定することができます。
 よって、労働組合が存在する場合は前述した労働協約の締結にあたって、事細かに労働者が安心し職場復帰可能な定めを取り決めなければならないと言うことです。
 いずれにしても、休職制度をその事業所の全労働者に適用させる場合、休職に関する事項は労働基準法により労働者に対して明示しなければならない労働条件の一つとなります。農協は必ずその内容について労働者に口頭または書面で通知しなければなりません。ここでも労働組合としてのチェック機能が問われています。
 相談のケ―スでは、ケガの内容が思わしくなくもう少し期間が必要であるならば労働組合へ相談し、医師の診断書等を提出し、休職期間の延長や働くことが可能な他の部署への一時的異動などを検討するなど農協側と何らかの形で話し合いを行うことが必要ではないでしょうか。
 また労働組合もその使命を果たすために最善の努力をおこなうことは組合員である以上、必然的なことです。労働協約等の改善も含めて…。

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 通勤手当も賃金の一部ですので、原則的には通貨で支払わなければなりません(労基法第24条の1)。この原則に言う『通貨』とは、日本で通用するお金のことですから、外国の通貨は無論、いわゆる現物給与は禁止されています。
 この賃金通貨払い原則の例外が許されるのは、『労働協約に別段の定めがある場合』です。従って、労働組合とその旨の労働協約を締結するならば、問いの様な通勤手当の支給も可能と考えられます。この労働協約は労働組合法上の成立要件(労働組合法第14条)を満たすことが必要ですが、それで足りますので、賃金全額払いの原則の例外を設定する場合と異なり、多数組合との協定である必要はありません。
 但し、当然のことですが、通勤手当をガソリンクーポン券で支給する旨の労働協約を締結したとしても、それは、当該協約を締結した組合の組合員にのみ適用があり、それ以外の職員に原則として適用されません。従って、非組合員あるいは他の労働組合の組合員に対して、多数組合との協約を根拠として現物給与を支給することはできません。
 ただ、当該多数組合が事業所の4分の3以上の労働者を組織している場合は、労働協約の拡張適用によって同じ事業所内の非組合員にも当該労働協約が適用されることになりますので(労働組合法第17条)、非組合員にも現物給与の支給が可能になります。また、少数組合の組合員については、その所属する少数組合と現物給与の支給を認める旨の労働協約を締結すれば、当該少数組合の組合員に対しては現物給与の支給が可能になります。
 この様に、労使間における交渉の結果締結する『労働協約』によって働く者の条件は大きく左右されるということです。労働組合の活動は常に真剣に対応しなければなりません。同時に個々の『締結――協約』の存在が働く者の組合員のためになるのか否か、を確りと検証し対応することが肝要です。決して経営者のための『協約』化をしないよう……。

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 高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)は、事業主が定年の定めをする場合には、『当該定年は、60歳を下回ることができない』として、60歳以上の定年制を事業主に強制しています。もし、事業主がこの規定に反して60歳を下回る定年年齢を定めた場合には、その定めは無効となり、定年の定めはないことになります。ここでの定年とは、労働者の意思に関わらず、労働契約関係を一定の年齢到達により終了させる制度をいうと解されています。従って、任意的な早期退職優遇制度の年齢や、任意的な在籍出向の年齢などはこれにあたりません。
 設問における取り扱いも、退職した者が、任意的な早期退職優遇制度を利用して退職したのであれば、退職後、引き続き嘱託雇用することになっても高年齢者雇用安定法に抵触することはありません。然し、事業主からの働きかけによる退職である場合に、本人が退職せざるをえなかったような状況が存在するならば、60歳定年制を義務付けた高年齢者雇用安定法の脱法行為とされる可能性があります。嘱託雇用の労働条件は、それまでのものと比較すると大幅に下がるものと思われ、その意味では、早期退職が本人の自由な意思によることを疑わせる要因となります。労働者の労働組合への相談機能等労働組合のチェック機能が重要視される、ということになります。
 他方、早期退職の優遇部分が大きいなどの事情は、当該職員の早期退職が自由意思によるということを認めやすくなる要因となりますので、早期退職について一概に本人の自由意思が推定できないということではありません。
 肝心なことは、早期退職優遇制度を利用して退職した労働者は、本人の自由意思で退職し、嘱託として再雇用されたといえるようにしなければならないということです。
 そのための労働組合としての活動も問われています。
 なお、ご指摘の職場内の雰囲気については職場内交流などを通して解決することが一番だと考えます。但し、労使間の間においては『雇用の在り方と考え方』について確りとした議論が求められていると考えます。

●06年4月施行、改正高年齢者雇用安定法
 『高齢者雇用安定法』が改正され、65歳までの雇用確保が義務化されることとなりました。具体的な雇用確保の方法としては、@定年の引き上げ、A継続雇用制度、B定年の定めの廃止、等によるとしています。また、改正法(雇用継続部分)は2006年4月1日より施行されるため、現行制度の見直しは2006年3月31日までに完了しておく必要があります。
 改正法により、企業は、原則、希望者全員とする継続雇用制度を導入しなければならなくなりますが、労使協定で継続雇用制度の対象者となる労働者の基準を定めることにより、『希望者全員を対象としない』制度とすることができるとしています。
 これに伴って個別労使は、『既に60歳以降の継続雇用制度を実施している』ところも含め、法改正の内容に合わせた制度の見直しが必要になります。特に、『継続雇用制度』による継続雇用の場合、対象となる労働者の基準は『労使協定』で定めることとなっています。然し、基準を定めるための労使協議が整わなかったときは、経過措置の期間内は『就業規則』で定めることも可としています。大企業3ヵ年(既に平成21年3月末経過措置終了)、中小企業5ヵ年(平成23年3月末まで)とされています。
 但し、労働組合としては、『就業規則による対象者の定め』については、『この方法はとらない』こととし、あくまでも労使協定の締結を求めることが必要です。その際、雇用基準の内容を労使合意することが前提となります。

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 契約社員などの有期雇用は、労働契約に雇用期間の定めがあり、期限に至れば期間満了として契約が終了します。従来、期限が来ても契約を自動的に更新することが珍しくなかったのですが、この不況の影響で、更新をせずに労働契約を終了させる、いわゆる『雇い止め』が急増し、労働トラブルが頻発しています。昨年来からの非正規の問題は『契約打ち切り』でさらに悪質です。
 そもそも、『雇い止め』は使用者(企業など)の都合でいつでも、どのような条件でも許されているわけではありません。厚生労働省は『有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準』を示しています。主な基準としては、@労働契約を結ぶに当たって、その契約の更新の有無、更新がある場合の判断基準などを明示する A1年を超えて継続雇用し、または3回以上契約が更新されている有期雇用労働者を雇い止めする場合は、少なくとも期間満了前の30日前までに予告する B雇い止めの理由について証明書を請求された場合は交付する C労働契約を1回以上更新し、1年を超えて継続して雇用している有期雇用労働者と契約を更新する場合は、契約期間を出来る限り長くするよう努める(有期労働契約の期間の上限は原則3年。但し、60歳以上や高度な専門知識等を持った人に対する契約期間の上限は5年)
 契約期間の満了を理由に雇い止めが行われても、それが認められるかどうかは、その人が従事していた業務の内容や労働条件、契約更新の回数や手続きの仕方、継続勤務を期待させる使用者の言動などにより総合的に判断されることになります。
 その結果、雇い止めが認められない場合は、『解雇』とみなされます。当然、使用者側には、解雇に至る『合理的な理由』と『正当な手続き』がもとめられることになります。
 今回の場合は、どれくらいの期間契約かはわかりませんが『数年間働いた』という実績から推測すると、『雇い止め』ではなく『解雇』に当たると考えられます。解雇が『合理的理由』に基づくものかどうかによっては、損害賠償や解雇無効の可能性もあります。当然、弁護士等を通じての闘争化に発生することにはなりますが……。
 この問題は労働組合員だとかそうではないとかの問題ではありません。職場の雇用の在り方の問題です。労使間において確りとした協議・交渉をおこなうことは当然です。

●以下、『雇い止め』の可否として 裁判例を基にした判断例
 …『雇い止め』が認められた例
・業務内容が臨時的である
・本人が期間満了で契約が終了すると認識している
・契約更新の手続きが厳格に行われている
・同様の地位にある労働者について雇い止めの例がある

 …『雇い止め』が認められなかった例 ⇒ 解雇とみなされる
・業務内容が恒常的である
・雇用の継続を期待させる使用者(上司)の言動がある
・契約更新の手続きが形式的である
・同様の地位にある労働者について雇い止めの例がない

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 年次有給休暇の権利は、法律上(労基法第39条)当然労働者に生ずる権利であって、労働者の請求によって、はじめて生ずる権利ではないということです。但し、その日数は、法で定めた条件を充たした場合の日数であることはいうまでもありません。
 すなわち労働者が、ある日休みますと時季の指定をすれば有休が成立し、その日の就業業務は消滅します。つぎに、有休を労働者がどのように利用するかは、労働者の自由であることです。であるから有休をとってパチンコに行こうと旅行に行こうと寝ていようと、使用者がとやかくいうことは出来ません。よって、職場離脱制度に有休を使うことは一方では農協として個々人の私生活の管理(職場離脱中に様々な問題点が発生すれば呼び出しがあることも想定されるため、活動制限が求められる)を行わなければならず、この点においても問題となります。
 いずれにしても、この2点が有休を考える場合の基本となります。然し、特段に業務の正常な運営を妨げる場合は、使用者に『時季変更権』が認められています。
 そこで設問の場合ですが、確かに『職場離脱制度』に合わせて有休の消化運動もやろうとの考え方から労使にて決定し運用することは一概に即否定するものではありません。然し、その場合の絶対条件としては、@有休の法的性格から導き出されるところの労働者の意思の自由を尊重した、労使間の前向きな話し合い A個々人の経験年数に応じて年休の日数が配分されるため不公平感の是正 B職場離脱―有休であるためその内容について整理、などです。労使協定が存在するから個々人の法的に付与された権利がないがしろにされることは許されないし、認められていません。
 いかに労使協定が存在したとしても、もし特定の人がその有休計画休暇には賛成しませんとした場合は特別休暇として『職場離脱制度』を運用せざるを得ないと考えられます。
 労働組合としても当時の世間の動きである『有休消化』運動に乗じて労使間の取り組みを決定したことは一概にだめだとは言えません。然し、今日では前述した様な考え方から全中・県中央会も『職場離脱制度』については、使用者の責に帰すべき事由による休業(労基法第26条)として扱うことを指導しています。
 このことを経営者にキチンと説明し、労使協定の変更を求めることが肝要です。経営者が応じない場合は全職員の意思の取り纏めを提出し変更を求めていくことも戦術のひとつですし、労働基準監督署からの指導を要請することもひとつです。私たちの意思をひとつにし対応すれば解決出来得る問題だと考えられます。
 労使間の約束事は法的な考え方を逸脱した内容を協定し、対応することは出来ません。例えば『賃金等カット』については経営困難などの合理的な理由が必要なのです。特に、今回の場合のように個々人に認められている権利であればなおさらです。

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 労働組合法第14条は、『労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名捺印することによってその効力を生じる』と規定し、書面の作成と労使双方の署名または記名捺印を労働協約の効力発生要件としています。ここに、『書面に作成し』とは、労使当事者が団体交渉において到達した合意内容を文書化することをいい、『署名』とは、みずからその氏名を書き記すことをいいます。
 労働組合法第14条が、このように、労働協約の効力発生の要件として、上記に述べたような一定の形式を備えることを要求しているのは、労働協約には、一般の契約と異なり、同法第16条等に規定する特別の効力が与えられており、また、労使はその有効期間中これを誠実に履行することを約束するものですから、その締結にあたっては当事者に慎重な考慮を払わせ、後日協定に争いが起こらないよう、内容を明確にし、意思を確認しておくことが必要であると考えられるからです。
 ところで質問の件ですが、その議事録が交渉過程における通常の問答であれば単なる第○回団交議事録のみであり、労働協約上の締結とは考えにくいと思われます。したがって、質問の議事録確認において労使間の合意が確認されておれば労働協約になります。例え、その名称が『申合わせ』等であっても労使間の合意が確認されていれば労働協約になります。よって、労使双方きちんと履行することが求められます。
 労働組合の使命と役割は、個々の労働者の『地位の向上』にあります。一つひとつの事柄をきちんと交渉し、確認されたことは労働協約として署名する。その協約がきちんと履行されているか否か、チェックする。このことが重要な取り組みです。
 以下、労使交渉の考え方について整理し確認します。

労組活動(労使交渉)の正しい考え方について整理しておくと、労働組合法の第一条の『目的』をみてみると、同一条には、『この法律は、労働者と使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること。労働者がその労働条件について交渉するため自ら代表者を選出すること……を目的とする』と定められています。まさに交渉は、『地位を向上』させることであり、われわれの要求は、労働条件を中心にして、地位の向上をめざす諸要求であって、経営者に権限のある事項は全て交渉事項…その交渉によってのみ労働者の労働条件は確立します。
働く者の『地位の向上』を求め頑張りましょう。

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  代休は、振替休日とは異なり、例えば休日労働に対する代償として付与する場合には、それが法定の休日労働であるならば、無給の代休を与えても割増賃金の3割5分以上を支払わなければなりません。
 設問の場合では、時間外労働を通算して所定労働時間に達したときに代休を付与するとのことですから、農協側は該当職員に対し、2割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。つまり、時間外労働時間を通算し、所定労働時間に達したときに代休を付与するという扱いを行うには、当然、賃金に関することですから就業規則にその旨の規定を定めなければならないということになります。また、規定を定めたとしても賃金精算は必要になります。この点、において農協側の認識(労務管理)は事後に代休として休日を設定するので賃金精算も不要であると考えがちなので注意が必要です。導入の考え方がコスト削減のスタンスから行っている以上、恣意的に割増賃金をカットしている場合が想定されますので労働組合へ相談し、対策・対応することが肝要です。また、常日頃より労働組合からのアンケ―ト調査等のおりなど職場実態を報告することが労組員としては求められています。
 整理しますと次のようになります。法定時間外労働と無給代休については、先に述べたように、割増分の差額の支払いが必要です。法定内時間外労働について就業規則で割増賃金支払い義務を定めている場合も同様です。
 そこで、賃金精算の支払い時期に関して問題が生じることがあります。時間外労働に対して代休を付与する制度を設けていても、一定期間たてば、代休に振替られなかった時間外労働に対しては、それが所定労働時間に達するのを待つのではなくて、当該時間外労働に対する賃金の支払いを行うべきであると考えるのが通常です。
 よって、労働組合として実態把握をキチンと行い不利益にならぬよう労使協定を締結し、納得出来得る労働時間とすることが肝要でしょう。
 なお、労働組合のスタンスとしては、こうした手法で時間外労働を整理するのではなくキチンとその日の労働として、その対価である時間外手当を支給させることが求められているのではないでしょうか。その上で労使ともに時間外労働を少しでも軽減する運動展開を図ることが問われているのでは…。

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 今回、取り急ぎ以上の5つの点について整理し、確認することとします。労働組合としてキチンと確認し対応してください。
 以上、あらためて『解雇』について整理しました。困難な時代ではありますが、私たちの職場からは正規、非正規を問わず『雇用』調整などをおこしてはならない。このことを労働運動の柱に確りと据え頑張りましょう。特に、昨年末からの非正規等の雇用カットはこの国の雇用制度の在り方を問われています。労働組合の出番です。今こそ、安心して働ける『社会』への構築を目指し頑張りましょう。

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  信用・共済部門に渉外外務員制度を採用している農協は、今日の段階ではほぼ全ての農協に位置づけられていると考えられます。そしてその業務形態は、農協のおかれている地域事情等を反映して、昼間型のパタ―ンと、昼間業務に加え夜間推進が必須であるパタ―ンがあります。
 そこで渉外員の労働時間管理についてですが、@通常の労働時間管理で行うのか A事業場外労働(労基法第38条)による管理を行うのか、業務の実態に即してどちらが合理的な妥当な管理か選択することになります。
 先ず、質問の場合で考えると、渉外員の主たる労働の形態は事業場外労働であるが、その労働時間は就業規則で定める始業、終業の時刻内におさまっているとみなされます。労基法の定める事業場外労働は、事業場外で使用者の指揮監督の及ばないところで労働するという要件に加えて、『労働時間が算定し難いとき』という要件があります。貴農協の渉外員の場合は、この『労働時間が算定し難いとき』にはあたらないと推測されます。それゆえ事業場外労働としての扱いは無理であり、通常の労働時間管理で管理することになります。よって、渉外員が帰所後業務の整理等のため終業時刻をすぎていわゆる残業となった場合は、当然割増賃金支払いの対象となります。
 ところで、渉外員の業態で夜間推進が常態となっている場合、事業場外労働の扱いが可能なのか、ということについて整理しておきます。
 事業場外労働とは、労働そのもののことではなく、事業場外で業務に従事し、且つ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難なとき、所定労働時間労働したとみなしたり、その業務遂行のため、所定労働時間を越えて通常必要とされる労働時間労働したものとみなすという、労働時間の計算の方法を定めたものなのです。
 よって、夜間推進が日常的に発生し、管理者はとても何時仕事が終わったのか管理できないような実態がある場合、事業場外労働の『みなし労働時間制』は法的には導入し得るし、キチンとした労務管理が運営されるならば合理的な管理方法となります。
 このみなし労働時間は、@所定労働時間労働したものとみなすのか Aその業務を遂行するため、通常所定労働時間を超えて労働することが必要な場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間、労働したとみなすの二つのどちらかを選択することとなります。夜間推進が常態の場合は、Aとなるでしょうが、所定労働時間を超えているわけですから、その超えた時間、常に割増賃金は支払わなくてはなりません。
 然し、例えば午後7時まで労働したとみなした場合には、実際の時間がオ―バ―していても午後7時までの労働とみなされ、また逆に早めに推進が終了しても午後7時までは働いたとみなされます。このような方法を取り入れるため、労働時間算定のトラブルをなくすため、最も事情に通じている当該事業場の労使で協定を結ぶことが必要となります。
 なお、みなし労働時間制を実施しても、曜日等によっては一部または全部内勤ということも発生するわけですから、その場合の対応等についても労使協定で定めておくことが肝要です。さらには、渉外員手当が支給されていると思われますので、それで時間外手当と相殺といった事例も多く見受けられます。その場合、この手当の性格は、事務職場の仕事とは異なる特殊勤務手当なのか、旅費日当にあたる実質弁償的なものなのか、それとも時間外労働の割増賃金相当分なのか、明白にし対応しておくことも必要です。
 いずれにしても、労働組合としては事業場外労働『みなし労働時間制』の意義と内容を職場実態との関係から精査し、労使間の協議を進めることが求められます。そのことができてはじめて経営者側の労務管理の能力が高まるのではないでしょうか。

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  先ず、試用期間について整理しておきます。使用者は、雇い入れの時点では労働者の資質、能力、適正などについて十分な判断ができないことがあるので、雇い入れ後期間を限って本人の勤務態度や実績などをみて本採用を拒否することができる制度があります。これを試用期間といいます。
 使用者は採用の段階においては、採用するかしないかについて広範な自由をもっています。然し、いったん採用すれば、試用期間が存在しても期間の定めのない労働契約が成立し、職業上の適格性がないとか能力が足りないというときに解約(解雇)できる権利があるだけです。判例では、この解約権を行使して本採用を拒否できるのは、『解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的に理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合』であるといっています。
 この合理的な理由とは、当初知ることができなかった事情に限られますが、本採用後の解雇の場合よりは広く解釈されていることは否定できません。
 試用期間の長さは、就業規則や労働契約で定められますが、不当に長いときは認められないことは当然です。例えば、6カ月の試用期間後さらに6カ月から1年の試用期間を経ないと正社員にはなれないとした制度に対し、後者の部分を無効とした裁判判例もあります。
 結論として試用期間の延長は、就業規則に規定がない限りは認められません。また、就業規則に規定がある場合でも、労働者の身分をいっそう不安定にするものですから、延長が必要な特別の事情がないかぎりは許されないことになります。
 労働組合としては前述した判例や考え方を参考にし、使用者側と協議することが肝要です。試用期間とか労組員ではないなどの問題ではなく働く者の雇用と身分の問題であり使用者側が一方的に試用期間を延長したり、解約・解雇することがあってはならない、ということです。
 職場風土の確立に対し、労働組合として真正面から対峙すべきでしょう。

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  本人が社会に役立ちたいと自発的に行う無償の活動が「ボランティア」です。
 ところが、近年、賃金コストを削減するために、名目だけボランティアにして労働者を雇い、または農協では産業祭り等に対しボランティアとして出勤してくれ等と「ボランティア精神」を前面に出し、賃金コストを削減のため平気で労働基準法違反を侵す経営者が後を絶ちません。いずれにしても、名目だけボランティアにして労働者を雇い、労働基準法を下回る違法な労働条件で働かせる悪質な事例が少なくありません。
 労働者であるかどうかは、指揮命令の有無、出退勤管理や労働時間管理等を基準に判断されます。これらについて拘束力が強ければ、自発的なボランティアとはとても言えません。形式や名目に拘わらず、労働者であるとみなされ、労働基準法や最低賃金法が適用されることになります。
 職場で上司から「5時以降は残業手当が払えないからボランティアでお願いします」「日曜日の行事は全職員参加なのでボランティアで、また、早朝の掃除等は・・・」 等と言われる場合は、使用者による指揮命令であるとみなされ、賃金支払いと割増手当の支払いの対象となることは当然です。